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1996のシャンパーニュ、その泡は健在か?

Saturday 16 July 2016 • 4 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。2006と1996のプレステージ・シャンパーニュのテイスティング・ノートも参照のこと。

ワインの文脈でヴィンテージ・イヤーと言うのは重要だ。その名声を早いうちに得れば、通常その命が尽きるまでそれは彼らに付きまとう。赤のボルドー2001のヴィンテージ、特に右岸のそれは時を経るにつれ間違いなく名声が高まったし、1993のブルゴーニュも同様だが、そのような場合はあくまで例外だ。

シャンパーニュでは、1996のヴィンテージは最初のうちは例外的な年だともてはやされたが、そのブドウが記録的な成熟度の高さと酸を兼ね備えていたのも理由と言える。最近、プレステージであるNPUを紹介しながらシャンパーニュ生産者であるブルーノ・パイヤールは1996のヴィンテージを「いたずらっこ」と表現した。なぜなら非常に移り気で、酸のレベルが味わうに堪えるレベルに落ち着くまで待たなくてはならない点でも生産者はハラハラし通しだったためだ。「でもそれを待つことができた忍耐力のある作り手にとっては結果は素晴らしいものでした。」この難しいヴィンテージは暑い夏だった1995年の翌年であり、1995の早熟なワインは最初のうちはドラマチックな1996年より劣るとみなされていた。

だが現在、1996の名声を見直す動きが多くみられるようになった。多くのシャンパーニュ愛好家と生産者は1996がいかに素晴らしい熟成を見せたかに疑念を抱き始めている。例えば酸は果実味と複雑さに複雑さを与え、第3アロマを引き立てるバックグラウンドになるべく控えめになっていくどころか、果実味はすでにその力を失いつつあるにもかかわらず酸がその味わいの中心でまだスポットライトを浴びている状態なのである。これは特に普通の、輝きの低い生産者による1996ヴィンテージ・シャンパーニュにはよくあてはまる。1996の格下げともいえる評価は1995の再評価を伴って広がりを見せてきた。1995のシャンパーニュで私が最近印象的だと感じたのはドン・ペリニヨンのP2レイト・リリース(白とロゼ両方)、ブルーノ・パイヤールのNPU、そしてシャルル・エドシックのブラン・ド・ミレネールだ。

私が専門機関であるCIVCがシャンパーニュで開催した総括的なテイスティングに招待されたのは唯一、2002年のみであることも付け加えておこう。このとき彼らはヨーロッパじゅうのワイン・ライターを招聘し1995と1996のシャンパーニュのブラインド試飲を開催した。当時の私の結論は、目を輝かせてこのように書いてある。「平均すると私は1995と1996のスコアは同じ点数(星3.3個)を付けているが、1995あるいはそれより前のヴィンテージに最も有名なものが多かったのに対し、1996(我々がテイスティングしたもの)にはやや無名の生産者のものが多かったことを考慮すると、1996は輝きを内在しているヴィンテージだと言えるのではないだろうか。」.

20年と言うのはシャンパーニュの熟成期間としては非常に長く、最高品質のベース・ワインが得られた年だけに作るとされるヴィンテージ・シャンパーニュですらそう言える。だが1996の高い酸は少なくとも理論上はベストの状態を30年目に向けて保つのに十分であると言える。

高級ワイン商BI(最近最高品質のシャンパーニュを中心にその守備範囲を広げる前はボルドー・インデックスとして知られていた)は10年物のシャンパーニュのテイスティングを毎年開催してきた。今年のイベントでは8本の2006プレステージ・シャンパーニュと、クリュッグの2006主体であるグランド・キュヴェが提供された。さらにBIの20周年記念の祝典として、今年は1996のシャンパーニュ1ダースが追加され、事実上すべての最高に魅惑的なワインが揃うこととなった。

これらの1996をテイスティングし(中には非常に高価なものもあることを認めよう)、最近テイスティングしたもので補完すると、1996で本当に突出したものに出会うには最高品質のものを選ばなくてはならないということが言える。そして実際がっかりすることもあり得るだろう。ゴッセのグラン・ミレジム1996とランソン・ゴールド・ラベルのマグナムは心地よく飲むには少し酸が強すぎた。

例えば先々週末にプライベートなディナーでボランジェ・グランダネ1996を同じケースから2本飲んだ。最初のものはブラインドで提供されたため私は少なくとも10年は熟成したものであると推測した。泡はほとんどなく、果実味が極端に欠けていた。まさに熟成がうまくいかなかった1996に共通する特徴である。だが2本目のボトルはやや後味がドライだったものの遥かにフレッシュで溌剌としていた。私のテイスティング・ノートはこう締めくくられている。「1996の最も酸っぱいものよりはましだが卓越しているとは言い難い」(この程度のボトル差 (和訳)は悲しいかな、スティルでもスパークリングでも一般的なことである。その理由はコルクの品質や、ケースに入れられる前の個々のボトルの環境によると考えられる)

一方でBIのテイスティングには通常リリースされているボランジェ1996と比較して、はるかに最近デゴルシュ(瓶内二次発酵の澱を分離すること)されたボランジェのマグナム1996が含まれていた。このボランジェRD1996は、「RD」が最近デゴルジュされたという意味だが、2013年の9月にデゴルジュされ、プレミアム付きで販売されているものだ(BIの保税価格でマグナム1本540ポンド)。これは遥かに力強く輝きを放っているワインで、その凝縮感は他の早くデゴルジュされたものに比べてあの高い酸を補完できているように感じられた。

BIでのテイスティングで最高の1996は(非常に珍しい)ロデレール・クリスタルのマグナムだった。これを味わうのは特別に素晴らしい経験だった。なぜなら世界的なクリスタル需要のおかげで長い間熟成したこの豪華なボトルに巡り合うこと自体が貴重な経験だからだ。しかもそれがおそらくシャンパーニュにとって最も良いサイズと言われるマグナムであるのだから。だがワクワクしたのはその珍しさだけではないことを誓って言おう。ジンジャーブレッドや焼きリンゴなどの非常に奥深い香りと、良い意味での電気的なエネルギーがこの若々しいワインにはみなぎっていたのである。その外観からも味わいからも、20年の熟成を経たワインだとはけして想像できないだろう。

私がこのワインを初めてテイスティングしたのは2002の終わりで、おそらくリリース直後のことだが、当時は全くもって近寄りがたく、その後8年ほどはどんな表情を見せてくれるのかすら想像できなかった。それを2007年、マグナムで再びテイスティングした際には「これは素晴らしく長命なものになるはずだ。もしそれが許されるのであれば」と書いている。クリスタルはその熟成を待てばそれに応えてくれる。めったに待たれることなく飲まれてしまうのだが。

ここで記述したワインの中には世界で最も贅沢なシャンパーニュも含まれていて、今はそれらに注目する最適なタイミングではないかもしれない。転移行動とでもとらえてほしい。

末価値のあるシャンパーニュ1996

これらは私が最近18.5~20点を付けた1996のシャンパーニュで(いくつかは18点のものがあるが)、価格は参考としてBIのものを併記している。ただしこれらの多くは珍しいものなので完売しているかもしれない。

Bollinger, RD Extra Brut 1996
£540  マグナム、BIでの保税価格

Dom Pérignon, P2 1996
£320  1本 www.millesima.co.uk

Philipponnat, Clos des Goisses 1996
£285 1本、BIでの保税価格

Louis Roederer, Cristal 1996
£800 マグナム、BIでの保税価格

Salon, Blanc de Blancs 1996
£1,900  1本、BIでの保税価格

原文

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