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2019 - ドイツの突破口となるヴィンテージか

2020年10月3日 土曜日 • 6 分で読めます
Dr Katharina Prüm in autumn vines in the Mosel, Germany

この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。Germany's 2020 releases - a guide 内、ドイツの2019ヴィンテージに関する幅広いワインのテイスティング・ノートも参照のこと。なお、まだ試飲は続いている。

2019はドイツワインにとって突破口のヴィンテージとなるのだろうか?リースリング嫌いの人々の偏見をぬぐうことができるのだろうか?

ドイツを象徴する品種、リースリングが世界で最も偉大な品種であることをあなたに思い出してもらいたい。この後に続く文をどうか受け止めてほしい。これらの点は21世紀の今でもほぼ変わらない。リースリングが生み出すワインは特にそれがどこで作られたのか明確に、かつ正確に表現する(まるでピノ・ノワールのように)。そして熟成は継続的かつ永遠に(少なくともカベルネ・ソーヴィニョンと同じぐらい長く)続く。一般的に味わいは非常にフレッシュで、比較的アルコール度数が低い。食事との相性が(一般的に白のブルゴーニュや他のシャルドネよりも)非常に良い。近年多くのリースリングは辛口で、甘くない。ドイツの辛口リースリングは世界で過小評価されている宝の一つと言える。

まだ納得できないだろうか?では2019のワインをグラスの中で回してみてほしい。2019は特にモーゼルとナーエが群を抜いて素晴らしい。気候変動の主な恩恵は、ドイツの生産者たちがもはや未熟なブドウを補糖でごまかす必要がないという点だ。かつて成熟しづらかったブドウは今や絶え間のない陽の光を浴び、ドイツの畑の中には日焼けが深刻な問題となっている場所すらある。フリッツ・ハーグを作るオリバー・ハーグは地球温暖化について「気候の再変動が起こらないよう、ストップボタンを押せればいいのに」と述べている。

その2019ヴィンテージに関するジャスティリーニ&ブルックス主催、ハワード・リプリーとイギリスで最も熱意あるドイツワインのインポータ、ザ・ワイン・バーンによるオンラインセミナーでは、オリバーの兄でシュロス・リーザーを所有すトーマス・ハーグが、ブドウの日焼けは今では日常茶飯事だと話していた。それも無理はない。2019年7月には気温が40度を超えた日が2,3日はあったのだから。かつてモーゼルのワイン生産者たちはスレート土壌を自慢にしており、それが日中の熱を吸収して夜間に放出し、ブドウの成熟を促してくれると話したものだ。だが21世紀の典型的な夏には、それはもはや長所ではなくなった。だが不思議なことに2019の最上のワインは決して熱の影響を受けているような味わいではないのだ。

マキシミン・フォン・シューベルトは現在モーゼルの支流、ルーヴァーにあるマキシミン・グリュンホイザーを父のカールから継承する過程にある人物だ。彼は2019が、豊満で、爽やかであるはずの酸がものによっては低めだった、明らかに暑い夏の産物である2018とどのように違うのか質問された。シューベルトによれば、温かいとされる日は2019年には50日しかなかったのに対し、2018年には90日もあったという。

5月5日の春霜で予定量のおよそ半分を失ったため、彼にとって2019は特に生産量の少ない年となった。とはいえ、彼は一族の所有する34ヘクタールの畑から11種類もの2019リースリングを生産している。その畑の一部には流行のピノ・ノワールも植えられている。私は生産量も潤沢だった彼らの2018のピノ・ノワールを最近テイスティングしたが、それはいい意味でナパっぽい、アルコールが15.5%にもなるものだった。20世紀のドイツワイン・ファンにルーヴァーでこのアルコール度数のワインが造られていると言ってもまず信じてもらえないだろう。「確かに2018には暑さを感じます」と彼は認め、「でも2019は軽やかでクラッシックなんです」と続けた。

その2018を批判しないように注意しながらも、ドイツの生産者たちは明らかに酸が高く間違いなくはるかにフレッシュな2019に対する興奮を隠しきれない。カタリナ・プリュム博士(上のアンドレアス・ダースト(Andreas Durst)による写真で畑にたたずむ人物)はヴェーレンにあるJ.J.プリュムを父のマンフレッドから受け継いでいるところだが、彼女によると「2019は本当に偉大なヴィンテージです。あらゆる面からみて、文句をつけるところがありません」ということだ。(彼らは辛口ワインを造っていないため、下記のリストには掲載含まれていないことは申し添えておこう)

もしかしたら、収穫の最中には彼女は同じことは言っていなかったかもしれない。オリバー・ハーグは、乾燥した秋のおかげでゆったりと収穫できた2018に比べ2019の収穫がはるかにストレスに満ちたものだった理由をこう述べた。「2019年9月の雨はワインに深みとミネラルを与えたかもしれません。夜は冷え込んだので酸を維持する助けにもなりました。でも収穫を進めるのは非常に難しかったのです」。

彼の兄、トーマスもまた、収穫日の決定は雨をよけながら非常に慎重に行わなくてはならなかったと同意した。だが彼にとっても2019はやはり偉大なヴィンテージであり、この9月の雨のおかげでフレッシュさが保てたこと、さらに収量が低かったこと、果皮が厚くなり凝縮感が増したことなどが2018よりもよいヴィンテージになった要因だと考えている。

酸の高さはドイツワイン純粋主義者からもてはやされる品質基準であり、ヴィンテージによっては酸が高すぎて、若いうちに飲むには向かないものもある(2010が思い浮かぶ)が、時間がたつとともにそれらは花開き、数十年にわたり熟成が進んでいく。2019の特徴は、食欲をそそる高い酸にも関わらず、その多くが今の時点でも飲み頃な点だ。J.J.プリュムのワインは伝統的にリリースが遅く、それを知っている通は何年もボトルの中で熟成させてから飲むものだが、2019はすでに見事な状態だ。カタリナ・プリュムがこのヴィンテージについて最初に口にしたことが「私たちのワインですら様々な段階で楽しむことができる」というのも腑に落ちるというものだ。

ドロシー・ツィリケンもまた、父からザール流域でワイナリーを受け継ぐ過程にある人物だが、「2019は繊細かつエレガントでありながら香りの強いヴィンテージです。今でもすでに開いていて飲みやすいですが、特にアウスレーゼやシュペートレーゼはさらに40年は熟成するでしょう」と話した。気候変動の前の時代には畏敬を集めていたドイツワインのほとんどは、かつての安ワインにブドウジュースを添加して甘くしたようなものではなく、上述のように自然な成熟や貴腐菌とよばれるカビによって凝縮されたことによる甘さからくるフルーティなスタイルだった。

だが現在この国の上質なリースリングの多くは辛口(ラベルにトロッケンと表記される)またはミディアム・ドライの、カビネットとして知られる羽のように軽いスタイルで作られる。いずれにしても、貴腐は2019はそれほど広く付かなかった。それでもJ.J.プリュムの対岸にあるヴィリ・シェーファーのクリストフ・シェーファーはリスクを冒し、ブドウの一部を10月中旬の好天のもとに残し、貴腐というよりもレーズン状になったブドウの恩恵を受けたアウスレーゼや、さらに成熟し甘いベーレンアウスレーゼを作った。シェーファー、J.J.プリュム、そしてシュロス・リーザーはいずれも、かの有名なヴェーレナー・ゾンネンウーアの畑の所有者であり、その畑の名は下の写真の日時計にちなんだものだ。

一方で彼が指摘したのはこのように暖かく乾燥した生育期では、その発生に湿度を必要とする貴腐は珍しいものとなってきた。ドイツのワインは2019のヴィンテージで頂点に達し、あとはただ暑く乾燥した年になってしまうという可能性は無きにしも非ずだ。

現在生産の過程にある2020の特徴はと言えばもちろん、パンデミックのための物流面での問題と、日焼けだ。


美しいドイツの2019辛口リースリング
これらのほとんどのワインはドイツ国内とその他数か国で入手可能だ。イギリスでは2019についてはプリムールとして専門店であるハワード・リプリーとジャスティリーニ&ブルックスから提供されている。

GGはグローセス・ゲヴェクスの意味で、優れた単一畑から作られた辛口を指す。

Battenfeld-Spanier, Mölsheimer trocken

Dönnhoff, Oberhäuser Leistenberg Kabinett
$24-$36 various US retailers

Dönnhoff, Niederhäuser Klamm Kabinett
$28 K&L, CA

Emrich-Schönleber, Monzinger Frühlingsplätzchen GG

Emrich-Schönleber, Monzinger Halenberg GG
£305 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Falkenstein, Krettnacher Euchariusberg Alte Reben Kabinett
$29.99 Binny's Beverage Depot, IL

Falkenstein, Krettnacher Euchariusberg Kabinett
$27-$29 various US retailers

Fritz Haag, Brauneberger Juffer Sonnenuhr im Falkenberg GG

Julian Haart, Piesporter Goldtröpfchen Kabinett

Peter Lauer, Lambertskirch Fass 14 Kabinett

Peter Lauer, Ayler Fass 4 feinherb

Peter Lauer, Ayler Kupp Stirn Fass 15 feinherb

Peter Lauer, Ayler Kupp Fass 8

Georg Mosbacher, Wachenheimer Gerümpel trocken

Rebholz, Birkweiler Kastanienbusch GG
£310 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Rebholz, Siebeldinger Ganz Horn im Sonnenschein GG
£275 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Schäfer-Frölich, Monzinger Frülingsplätzchen GG

Schloss Lieser, Brauneberger Juffer Sonnenuhr GG
£140 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Schloss Lieser, Wehlener Sonnenuhr GG
£140 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Willi Schaefer, Graacher Domprobst Kabinett
$38-$42 in the US

von Schubert, Maximin Grünhäuser, Herrenberg Kabinett
HK$220 The Fine Wine Experience, Hong Kong

von Schubert, Maximin Grünhäuser, Abtsberg Nr 33 Kabinett

Wittmann, Westhofener Aulerde GG

Zilliken, Saarburger Rausch Kabinett
£90 per case of 6 ib Justerini & Brooks

国際的な取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文

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