ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting

ブラインド・テイスティングのすべて

• 6 分で読めます
Glasses arrayed for a blind tasting

この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ワインが主観的なビジネスである証拠が必要であれば、ブラインド・テイスティングという活動を見るだけで事足りる。

今、世界の180人が、ブラインド・テイスティングのスキルも問われる試験の結果を待っている。そう、マスター・オブ・ワイン研修生だ。進級試験では12種、最終試験では36種のワインを恐ろしくもブラインド・テイスティングで評価し、特定することを求められるのだ。

私がこの試験を受けたのは1984年のことだが、当時、事ははるかにシンプルだった。オーストラリアのワインはどう見てもオーストラリアだとわかるほどだったからだ(白ワインは当時流行だった、酸素との接触を限りなくなくす手法のせいで明らかに緑がかった色をしていた)。樽発酵をしたシャルドネが世界のどこで造られても同じ味に感じられるようになる時代のはるか前のことだ。

当時のマスター・オブ・ワイン試験で取り上げられるブドウ品種は現在よりはるかに限定されていた。ちなみに今年のMW試験に使われたワインのブドウ品種の一部を紹介すると、カリカンテ、トロンテス、アルバリーニョ、マルサンヌ、ルーサンヌ、ジンファンデル(2回)などだ。

MWの試験官たちは常に、ワインの品種や産地をあてることよりもワインの評価とそれに至るまでの理論が重要だと主張している。だがそんなコメントは、MW協会のウェブサイトにすでに公開されているワインリストを見て、自身の推測(ブラインド・テイスティングにはこの推測というものも大きな割合を占める)が実際からかけ離れていたと知った生徒にとっては、何の慰めにもならないだろう。

我々のようなワインのプロのほとんどは定期的にワインをテイスティングしているため、品質の評価についてはかなりの腕を持っている。しかし品種や産地を当てることを目的としたブラインド・テイスティングは、スポーツのようなものだ。練習を重ね、自身のコンディションをピークに持って行かなくてはならない。

私は近年、滅多にブラインド・テイスティングをすることはない。拒否しているつもりはないのだが、私にブラインドでワインを提供する人がほとんどいないのだ。とても貴重な機会といえば、ボルドーの人々がプリムールの際、批評家たちにブラインドでのテイスティングを提供していたことだ。これはシャトーを特定する目的ではなく、先入観なくワインの品質を評価させるためだった。だが、この習慣は2016ヴィンテージ以降なくなってしまった(もしかしたら多くの最高級ワインが低い評価を得たことが彼らの気に入らなかったのかもしれない)。現実的に唯一と呼べる例外は、打ち解けた仲間と囲むディナーテーブルで、互いの間違いを笑いあいながら行うものだ。一方、もう一つの例外は毎年2月にオックス・ブリッジのワイン・テイスティング協議会で審査員を務める際だ。この場合には競技者たちの採点をする前に、審査員たちがワインをどう評価したか記録しておく方がフェアだと考えられているためだ。

ところが、最近私は2つのディナーに招かれた。それはどちらも、いわゆる世界で最も有名なブラインド・テイスティングである、パリスの審判を再現しようとするものだった。この審判は1976年にフランスのトップ・テイスターたちが招かれ、フランスの最高級ワインとカリフォルニアの新興ワインを比較するというものだった。結果として、彼らにとっては恐るべきことに、1970のシャトー・オーブリオンやブルゴーニュの特級であるバタールモンラッシェなどのワインよりもアメリカのワインを高く評価することになったのである(30年後、海を渡って行われたリベンジ・マッチについての記事はこちら)。

この名高きブラインド・テイスティングのワインは全てシャルドネか、カベルネとそのブレンドで、ある意味カリフォルニアで最も一般的なワインであったとも言える。だから今年の4月にニューベリーにあるザ・ヴィンヤード・レストランでその再現をするディナーに参加した際、明らかに白ワインだった最初の2つのワインについて、それらがシャルドネ以外の品種だとは思ってもみなかった。

今回のホストは私と同じぐらいカリフォルニアワインに精通した人物で、シリコン・バレー・バンクのワイン・プロフェッショナル、グレッグ・グレゴリーだった。彼はソノマ・カウンティ・ヴィントナーズ基金支援のために2019年に開催されたオークションで、サー・ピーター・マイケルの一族が出品した今回の6名分のディナーを含むロットを高額で落札した人物だ。今回のテーブルで、ワインのプロは私と彼だけだった。他のメンバーがコース最初の料理であるオークニー産のホタテに注意を払っている傍らで、私たちは最初の2つの白ワインをすすり、どちらがブルゴーニュで、どちらがカリフォルニアのシャルドネなのかという間違いなく退屈な議論をしていたのである。

そしてその答えは・・・どちらでもなかった。なんと、どちらもリースリングだったのである!(ワインを知っている読者の皆さんならリースリングとシャルドネがいかに違うか、おわかりだろう)。グラスの中から我々にニヤリと微笑みかけていたのは、トリンバックのキュヴェ・フレデリック・エミーユ2009と、カリフォルニア北部、メンドシーノ産の、シャトー・モンテレーナ2016だった。これこそが、ブラインド・テイスティングが偏見から受ける影響をこの上なく示していると言えるだろう(そのあと、鱒とホースラディッシュと共に提供されたソーヴィニヨン・ブランを飲むときには、我々はかなり慎重だった)。

6月末には別のパリスの審判を再現したブラインド・テイスティングに招待された。これもまた別のチャリティ・オークション、マリー・キュリー財団によるロンドン・ブレイン・ゲームのもので、1組の銀行投資家がロンドンにある、かつてダボー(Dabbous)があった場所にあるノワゼ(Noizé)の地下で開催したディナーだ。

購入者であるマシュー・ジャーマンド(Mathieu Germond)は素晴らしいワインを所有している人物で、このイベントのために最高のワインを提供してくれた。また、マリー・キュリー財団からも、彼の入札額の大きさを考慮し、素晴らしいワインが提供されることとなった。

その席で私はブラインド・テイスティングの司会進行を頼まれた。経験上、多人数での開催では特に、グラスを混同するケースが多いと知っていたので、ジャーマンドに私物であるプラスチック製のクリップを渡し、参加者のグラスにそれをつけてもらうことにした。「右のグラス、左のグラス」などとするよりも識別が楽になるからだ。そして参加者にはペアごとにどちらがカリフォルニアのワインと思うか、手を上げてもらうことにした。

私からすると(非常に品質の高い)2017クッチ・ソノマ・コースト・シャルドネと土っぽさが感じられるラペの2017コルトン・シャルルマーニュを見分けるのは簡単に思われた。また、これもソノマ・コーストのワインで、美しく仕上がったリトライのザ・ヘイヴン・ピノ・ノワール2013とモレサンドニのステファン・マニャン・プルミエクリュ・レ・ファコニエール2011も無事に見分けることができた。

次のペアは最も高価なワインだった。両方ともカベルネ主体で2008ヴィンテージであり、どこから見ても申し分のないワインだった。私はボルドーの1級であるシャトー・ラトゥール2008は熟成の進行が遅いことで有名だから、カリフォルニアのシリコン・バレーを見下ろす場所にあるリッジ・モンテ・ベッロ2008よりはるかにタンニンが強く若々しいはずだと自信を持っていた。ちなみに後者は長年の経験から、私が最もお気に入りのカリフォルニアのカベルネでもある。その長期熟成のポテンシャルは偉大で(2018年にテイスティングした1975はまだまだ力強かった)、ボルドーの1級に匹敵する繊細さも持ち合わせている。このことは、実際のブラインド・テイスティングで私が両者を逆だと思ってしまったことからも、正しいことが証明されるだろう。

ブラインド・テイスティングで競争心が強い人は、あらゆる手掛かりを探す。ボトルの形、ボトルネックに残ったフォイル、ガラス瓶の色など。恥知らずな輩の中にはバックヤードを覗き見るチャンスを伺う者すらいるほどだ。ニューヨーク誌のワインライター、故アレックス・バスパロフが言っていたように「5秒の覗き見は10年のブラインド・テイスティングの経験に匹敵する」のである。

その点で最も私が苦しめられるのは出題用のワインを完全に、そして多くの場合は不条理なほど無関係なワインの空瓶に移し替えて出される場合だ。あるワイン業界のホストは、デカンタージュをした2本目のワインの品種や産地について経験豊かなブラインド・テイスターたちにさんざん議論させた挙句、最初にテイスティングした1本目のマグナムの残りだったと明かしたケースもある。それを言い当てた人は一人もいなかった。

最初に書いたように、ブラインド・テイスティングでは客観性はどこかに行ってしまうのである。

相対価格
以下のリストはノワゼで提供された順に並べてある。

シャルドネ
Dom Rapet, Grand Cru 2017 Corton-Charlemagne
$159.99 The Wine to Buy, Sarasota, FL

Kutch Wines Chardonnay 2017 Sonoma Coast
$52.98 Rye Brook Wine & Spirit Shop, NY (I’d recommend any Kutch wine as a suitably bamboozling one in a France v California blind tasting; try Kutch Pinot Noir 2020 Sonoma County at £36 from Roberson Wine)

ピノ・ノワール
Littorai, The Haven Vineyard Pinot Noir 2013 Sonoma Coast
$84.99 (2014) Lighthouse Wine & Spirits, Beverly, MA

Dom Stéphane Magnien, Premier Cru Les Faconnières, 2011 Morey St-Denis
$74.99 (2013) Mt Carmel Wine & Spirits Co, CT (2013); $78.99 The Wine House, San Francisco, CA

カベルネ
Ridge, Monte Bello 2008 Santa Cruz Mountains
$250 Purevinewines, £250 James Nicholson Wine

Ch Latour 2008 Pauillac
$585.99 Bayway World of Liquor, NJ; £596.68 Lay & Wheeler

その他の各国の取扱業者はWine-Searcher.com. を参照のこと。

パリスの審判とその再現に関する記事はこちらから。

原文

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