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卓越したクリュッグの精神

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この記事のかなり短いバージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。今回の訪問に伴う一連のクリュッグのテイスティング・ノートも参照のこと。

ほとんどのワイン愛好家にとってクリュッグというシャンパーニュはあり得ないほど高価で(1本100ポンドを優に超える)、あるいは一部の人だけの特権である、特別な場面でクリュッギストだけが楽しむようなカルト・ワインと捉えられている。

私はそのワインから思い出深い2つの朝食を連想する。一つ目は1970年代後半、海峡横断フェリーの旅の途中に立ち寄った、誰もが愛したクリケットのコメンテーター、故ジョン・アーロット(John Arlott)のハンプシャーのお宅でのキッパー(ニシンの燻製)と当時クリュッグのノン・ヴィンテージ・ブレンドとして知られていたプライベート・キュヴェという型破りな組み合わせの朝食だ。もう一つは今年の初め、卓越したヴィンテージ、クリュッグ2002のテイスティングをする初めての外部の人間としてランスにあるクリュッグの本部に招かれた時のことだ。49歳になるオリヴィエはこのブティック・シャンパーニュ・ハウスのアンバサダーとして各地を飛び回る一族の一人でソーシャル・メディア常習者だ。私は彼が私を招待したのは私の舌ではなくツイッターのフォロワー数が目当てだったのではないかと疑っている。

クリュッグは以前何度か訪れている。最初の訪問は例のキッパーの出来事のあと比較的すぐのことで、当時の私はセラーの多くの部分が覆い隠されていたことに気づくことができなかった。実はそれはプライベート・キュヴェに代わる製品をまもなく立ち上げるところだったためだったのである。グランド・キュヴェはこの上なくエレガントで目を引く形のボトルに入れられ、リリース前に何年もの間寝かされる。彼らがそれほどの長い間秘密にできたのは奇跡的なことだ。後日オリヴィエの祖父ポールがクリュッグ1959をニックと私のために開けてくれ、その後の訪問はポールの息子、オリヴィエの父で醸造責任者だった冷静沈着なアンリと、クリュッグが世界の中心にあるのだという彼の信念を布教して世界を飛び回った大胆不敵な叔父、レミの時代となった。

だが昨年1月の訪問は私にとって久しぶりのことで、狭い中庭と、彼らのトレードマークである発酵用の樽が並ぶヴィクトリア調の生産設備は本質的に変わっていないように見えたものの、レセプションはずいぶんと印象が異なっていた。我々が会ったのは流行のホテルを想起させるようなリビングルームで、棚は新旧のワイン本で満たされていた(ワイン・グレープスが下の写真の右下に写っていることに注目してほしい)。

その最高のポジションには革で閉じられた、創始者であるヨーゼフ・クリュッグの非常に特徴的なシャンパーニュのレシピがつづられたノートが置かれていた。彼は非常に自信があったため、自らシャンパーニュ・ハウスを設立することを決め、妻が彼の前職の上司で、その名を冠したシャンパーニュ・ハウスのアドルフ・ジャクソンに辞表を持って行かせた。彼はヨーゼフの義兄にあたる。

1月のその日の午前10時、コーヒー・テーブルにはバターの香りのクロワッサンの山と、クリュッグの特徴的な背が高く腰部分がふくらんだチューリップ型のグラスの林、そして1本のグランド・キュヴェがあった。地球上でもっとも知られたシャンパーニュの一つで朝食を取ることに誰も怪訝な顔はしていなかった。それはどちらかというと家族の朝食といった雰囲気で、その家族はオリヴィエ、2009年からCEOを務めるマギー・エンリケス、シニア・シェフ・ド・カーヴで1998年からセラーの実権を握る53歳のエリック・レベル、彼の女相続人に指名されたジュリー・カヴィル41歳(下の写真で愛情深く樽を確認している)からなっていた。リラックスしつつも濃厚なチームの関係が何よりも私の心を打った。私はこれほど笑顔にあふれた(そしてシャンパーニュを前にした)職場を見たことがない。

彼らを結び付けているのはおそらく、レミやアンリがそうだったようにクリュッグの偉大さに心を奪われている点だとは思うが、1999年にレミー・コアントローを獲得した高級品の複合企業LVMHとマギーとの関係のおかげで全員がやりたいことを比較的落ち着いて達成する手段を得たからなのではと推測する。マギーはしなやかなベネズエラ人で、LVMHの支配層にアルゼンチンで彼らの多くのワインビジネスのうちの一つを運営する手腕を見せつけた人物でもある。

彼女はクリュッグのポテンシャルを最大限に引き出すことに夢中で、より多くのリザーヴ・ワインを使うよう(彼らはすでに他のシャンパーニュ・ハウスよりもブレンドに使用する材料が多いのは有名で、グランド・キュヴェでは200にも及ぶと言われている。)、また最後のデゴルジュマン後のリコルクのあと、リリース前の熟成期間も約1年まで延長するよう会社を説得した。それほど遠くない昔、長い熟成を必要とするシャンパーニュであるクリュッグのリリースがやや早すぎた時代があったが、今やマギー効果が間違いなく出始めている。その前日のディナーではシャンパーニュの行政機関から発表される公式な収穫日について活発な議論が交わされていた。彼女はそれが今の気候変動の時代には遅すぎると考えているようで、こう説明した「もし早く摘むと逸脱とみなされてしまうんです。でも彼らに尋ねるのではなく、いつ摘むべきかを彼らに伝えるべきなんです」。

ブレンドの達人エリック・レベル(写真上)はオフィスに引きこもっては毎年新しくグランド・キュヴェのための信じられないほど複雑な原料の組み合わせを考え出す。彼がクロワッサンを平らげてからシャンパーニュのグラスを持ち上げた最初の人物だった。「コードって?」彼は自動的に自分のチームに向かって尋ねた。2011年からマギーとオリヴィエの影響でクリュッグはすべてのシャンパーニュのバック・ラベルにコードを付け、消費者がクリュッグのウェブサイトやQRコードを使って実際そのブレンドに何が使われているのか、いつデゴルジュされたのかという情報を得ることができるようにしているのだ。オリヴィエは彼のお気に入りのスマートフォンを持ち出し、このグランド・キュヴェのブレンドは2007のヴィンテージを主体にしてセラーで7年間、1990年までさかのぼる12のヴィンテージに由来する合計で183種の原料を用いていることを示してくれた。

クリュッグのカギとなるのは毎年最終ブレンドを決める前に行われるテイスティングだ。収穫から3月までの毎朝11時になると小さなテイスティング委員会が招集される。エリック、ジュリー、エリックの右腕であるローラン・アルバン(Laurent Halbin)、二人の若い醸造家ジェロームとアリス、時にはレミと、常にオリヴィエかマギーが加わり、15種類のサンプルをテイスティングする。舌が疲労する恐れがあるためそれ以上は無理だと思われるのだが、彼らは400ものサンプルを2回または3回テイスティングする。「テイスティングはいつもブラインドで、感じたことをなんでも言うようにしています。序列は全くありません。」エリックはきっぱりと言い、慣例的にシャンパーニュで最も嫌われてきた品種に触れた。「もしベストだと考えれば、ムニエを15-20%使ったブレンドだって作りますよ」クリュッグは多くのシャンパーニュ・ハウスがトップ・ワインに使う品種をピノ・ノワールとシャルドネに限定している中でムニエをブレンドに入れることでも有名だ。「テイスティングする時、品種には言及しないんです」ジュリー・カヴィルは言う。「ただどのワインがどれほど表現力があるか、それがどうブレンドに生きるかを判断するだけです」(クリュッグの生産工程の詳細に興味をひかれた向きには2016年5月にアラン・タルディが出版予定のChampagne, Uncorkedでそのすべてを知ることができる)

クリュッグの貴重な歴史と品質を追求するゆるぎない技術から考えると、このシャンパーニュ・ハウスは意外なほどIT志向だ。テイスターはそれぞれのワインについて議論する前にその印象をiPadに入力する。最近はワインの特徴を相互参照できるようなプログラムを考案し、数十年に及ぶブドウの各ロットの記録も登録、その樽でどのように個別に発酵したか(シャンパーニュではめったに見ることのできない詳細だ)、毎回のテイスティング・ノート、それぞれのロットに毎年何が起こったのかまでわかるようになっている。最上部の写真に示す通り、古い樽の一つ一つにもバーコードが記されている。クリュッグでは最近ワイン事業では初だという試みを発表した。これはクリュッグを飲んでそれについてツイートした個々人に返信をするというものだ。ただ、彼らの公約である「800種の特化した独自の反応を返す」の中の2番目の形容詞の正確性については疑問に思う。

陽気で自信家でもあるジュリー・カヴィルがこのチームに加わったのは2006年のことで、エリック・レベルは明らかにそれに満足している。「彼女は私と同じようにテイスティングするんですよ。若い人はアロマと描写に頼ってワインを判断するものですが、私と彼女は常に先を見ていて、それぞれのワインがどうブレンドして熟成していくかを見極めようとしているのです。私の知っていることを彼女に伝えるのはとても重要なことです。アンリ・クリュッグが私にきっかけをくれましたが、まだ十分ではありませんから。」

クリュッグの特別な精神を受け継いでいくことはレベルの毎日の最大関心事だ。「私たちは履歴書に載せるために短期間ここで働く人を求めてはいません。」彼は言う「共通した目的と記憶が必要なんです」レベルの計画では彼は自身の引退より早くにブレンドの決定権をジュリーに譲り、彼女の決定の下で生み出されたブレンドについて密接に、彼女自身がその原料を知ることができるようにすることだ。

ジュリーはオリヴィエやマギー同様仕事に幸せを感じているように見える。「今までは本当にラッキーだったと思います。もし私が12月の初めにブレンドを決めなくてはならないとしたら、それはきっと全く違うものになるはずです。」

お気に入りのクリュッグ

多くのGrande Cuvée
Rosé
2002
2000
1998
1989
1982
1979
1973
1959

取扱業者についてはwines-earcher.comで探すことができる。

原文

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