ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

ピノ・ブラン、決して劣らない品種

2019年11月9日 土曜日 • 5 分で読めます
Johannes Jülg strides out into his vineyards on the Franco-German border

ピノ・ブラン、ピノ・ビアンコ、ヴァイスブルグンダー、ヴァイサー・ブルグンダーなど多様な名前で知られている品種に対する賛歌である。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

認めるべきものは認めるべきだ。デイヴィッド・シドッキット(David Schildknecht)はオハイオに拠点を置く私と同い年のワイン・ライターだ。何年にもわたり我々は彼の愛するドイツとオーストリア、またカリフォルニアでも時折仕事を共にした。彼が他と違うのは情報をいかに寛大に共有してくれるかという点だ。彼のおかげでセント・ヘレナで初めて、今となっては最高のナパ・カベルネを生産するスポッツウッドを訪問した際に彼らのテロワールを重視した優しいスタイルに動揺せずに済んだものだ。

彼が私に注目するよう話したもう一人のワイン生産者はヴァージニア州のRdVのルトガー・ド・ヴィンク(Rutger de Vink)で、彼もまた洗練されたボルドー・ブレンドの生産者だ。彼の場合はボルドーで最も有名なワイン・コンサルタント、エリック・ボワスノの影響にが大きい。だが、私がデイヴィッドの情報なしには世界のワイン街道から大きく外れたこの土地まで足を運ぶことはなかっただろう。

5年前、彼はウィーンで例年開催される特別なワイン・フェア、ヴィー・ヴェナム(Vie Vinum)で、あまり耳にすることのない白ワイン用品種であるピノ・ブランに特化したプレゼンテーションを行った。この品種はドイツ語圏ではヴァイスブルグンダー、あるいはヴァイサー・ブルグンダー、イタリアではピノ・ビアンコと呼ばれている。当時私は完全に納得したわけではなかったが、最近のテイスティングで私はこのブドウから作られたワインがどれほど品質と使い勝手の良いものになるのか納得できたような気がする。(Pinot Blanc - Austria shows its stuff および Schildknecht on Austrian Weissburgunderも参照のこと)

私は先日、人気が高く尊敬を集めるイギリスのワイン購入協同組合であるザ・ワイン・ソサイエティからたった10.95ポンドで提供されている魅力的なワインをテイスティングしながらそのフルーティでフレッシュな魅力を思い出さざるを得なかった(ワイン・ソサイエティのワインに関する最新のテイスティング・ノートも参照のこと)。ユルグ・ヴァイスブルグンダー2018ファルツはドイツの生産者が作ったものだが、ブドウは実際にはフランスのアルザス地方側の国境地帯で栽培されている。私のテイスティング・ノートには「ほとんどのブルゴーニュ白よりはるかに面白い」とある。ファンキーさ、バイタリティ、そしておそらく樽を使っていない点が魅力的なのだろう。ドイツ人だからなのか、この写真に自分の育てたブドウと共に写っているヨハネス・ユルグ(Johannes Jülg)はこれらのピノ・ブランに大きく注力することを全く恐れていないようだった。

面白いのはこの品種がライン川をはさんで全く対照的な評価をされている点だ。アルザスでは長きにわたって「高貴な」品種とされてきたピノ・グリより数段低い品種だとみなされている。私の経験上、特にアルザスではピノ・グリは香りが強くスパイシーで色が濃く、ピノ・ブランより力強い。だがイタリア人がピノ・グリをそう呼ぶピノ・グリージョとしては、その価値は下がる。イタリアからは退屈で安価なピノ・グリージョが大量に輸出され、それらは品種特性をしっかり表現したものというよりは収量を拡大した結果によるスタイルと思われるものだ。だがイタリアの北東部にあるフリウリは例外的に、非常に優れたピノ・ブランを提供する。そのカギは価格だ。

事実ピノ・ブランはピンク色の果皮をしたピノ・グリと同様、偉大なブルゴーニュの品種であるピノ・ノワールの色の薄い変異種であり、ピノ・ブランを劣った「いとこ」とみなす遺伝子学的な理由はない。だがアルザスのワインでピノ・ブランとラベル表記のあるものには、情熱をこめて作られたワインも、100%ピノ・ブランで作られたワインもほとんどない。

オーセロワはピノ・ブランのある意味「いとこ」で、アルザスでは広く栽培されており、なぜかピノ・ブランとラベル表記されたワインに好きなだけ(時には100%でも)オーセロワをブレンドしてよいことになっている(When Pinot Blanc isn't参照のこと)。だがオーセロワは酸を失いやすく、夏の気温が高くなるにつれその問題は大きくなってきたため、ピノ・ブランにきちんと手間をかけているジョスメイヤーやクライデンヴァイスのようなアルザスの生産者のものを探す方がよいだろう。とはいえ、ほとんどのアルザスの生産者の間では、ピノ・ブランはサラブレッドではなく労働馬とみなされている。

ところがライン川を越えたドイツでは、ヴァイスブルグンダーは非常にまじめに取り上げられている。ドイツ人はつい最近になってようやく流行のシャルドネを畑に植えるようになったこともあり、ヴァイスブルグンダー(シャルドネの親戚で、巨大なピノ一族の一員でもある)はある種シャルドネ「もどき」と長い間みなされてきた。そのため、典型的なシャルドネである白のブルゴーニュ同様十分な(ときには過剰な)樽を利かせることが多く、今世紀初頭はやや大味でオークの効き過ぎたヴァイスブルグンダーが作られていたが、物事は間違いなく良い方向に変わってきているようだ。

幸いなことに、バーデン南部、ファルツ、ラインヘッセンなどドイツのヴァイスブルグンダーのほとんどが栽培されている地域の生産者たちはオークへの執着から脱却し、現在は本当に上質で食欲をそそるチャーミングなヴァイスブルグンダーを作るようになってきた。特にバーデンでは、ヘーガーやレープホルツのものはまさに高級品として楽しむことができる。

オーストリアは快活に口いっぱいに味わいの広がる(でも甘くない)ピノ・ブランの重要な供給源だ。ものによってヴァイスブルグンダー、ピノ・ブランと表記が異なる。ウィーンでシドッキットが彼の2014をこの品種への賞賛の1本として紹介したことも驚くことではなかった。彼の主張では若いピノ・ブラン/ヴァイスブルグンダーは甘いトウモロコシのような味わいがするのに対し、熟成に従ってエビの殻のような味わいに進化していくらしい。私自身は確かに甘いトウモロコシは感じることができたが、正直エビの殻についてはよくわからなかった。

この品種の上質な生産者はオーストリア全土にいるが、この国の中心ともいえるグリューナー・フェルトリナーと有名なリースリングが主役であるにも拘わらず、特に南東部のブルゲンラントには多く存在する。

だがピノ・ブランがその受けるべき称賛を真に得ることができるのはそれがピノ・ビアンコと呼ばれる地域だろう。アルト・アディジェあるいはその南部のチロル地方はイタリア、オーストリア、ドイツの影響がカクテルのようにまじりあうアルプス山麓の地域だ。ここでは、他のワインの世界では見られないことだが、最高のワインの非常に多くは運営力に優れた協同組合から作り出される。カンティーナ・テルラーノではピノ・ビアンコから優れた一連のワインが作られており、一部は品種にかかわらず、世界中の流行でもある畑の特徴を表すスタイルになっている。ここではピノ・ビアンコは一般的にステンレス・タンクで醸造され、大きな樽で熟成される。これらは5年以上瓶内で熟成することが可能なワインであり、本格的なブルゴーニュの白同様、食事との相性がすこぶる良い。

ヨーロッパの外でも、歴史的にはシャルドネの陰に隠れてきたものの、ピノ・ブランに動きがみられる。サンフランシスコ、モントレーの山奥にあるシャローンでは長年にわたりピノ・ブランを本格的なブルゴーニュ白とそん色なく作っているし、さらに南にあるオーボンクリマでは繊細な樽の香りをつけたピノ・ブランとピノ・グリのセントラル・コースト・ブレンドを作り続けている。

さらに私がそのピノ・ブランのオーストラリアの常識をはるかに超えた品質に驚かされたのは数年前メルボルン郊外のマセドン・レンジから吹く冷たい風にさらされるグラニット・ヒルズを訪れた際に出会ったものだ。シドッキットの言うことには耳を傾ける価値がある。


本格的なピノ・ブラン/ヴァイスブルグンダー/ピノ・ビアンコの生産者


フランス
Josmeyer
Kreydenweiss
Martin Schaetzel

ドイツ
Battenfeld-Spanier, Rheinhessen
Brenneisen, Baden
Christmann, Pfalz
Ernst Dautel, Württemberg
Hanewald-Schwerdt, Pfalz
Heger, Baden
Heitlinger, Baden
Jülg, Pfalz
Knewitz, Rheinhessen
Rebholz, Baden
Stigler, Baden
Martin Wassmer, Baden
Wittmann, Rheinhessen
Ziereisen, Baden

オーストリア
Ebner-Ebenauer
Neumayer
Prieler
Herbert Zillinger

イタリア
Cantina Kurtatsch, Alto Adige
Cantina Terlano, Alto Adige
Castel Juval, Alto Adige
Colterenzio, Alto Adige
Girlan, Alto Adige
Hofstätter, Alto Adige
Kränzelhof, Alto Adige
Alois Lageder, Alto Adige
Manincor, Alto Adige
Musella, Veneto
Tiefenbrunner, Alto Adige

その他
Au Bon Climat, Santa Maria Valley, California
Granite Hills, Macedon Ranges, Australia

これら生産者のテイスティング・ノートはこちらのデータ・ベースから、国際的な取扱業者はWine-Searcher.comから確認できる。

原文

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