ヴォルカニック・ワイン・アワード | 25周年記念イベント | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

赤ワイン、白ワイン、とブルーカラー

2020年10月31日 土曜日 • 5 分で読めます
Audrey pours Gail some wine on Coronation Street

今やワインは男女を問わない飲み物として、ビールに取って代わった。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ワインという深い穴には多くの謎が潜んでいる。複雑で、しばしば自己満足的な思考回路の飲み物であることもあり、ワインはエリート主義を象徴する飲み物であるという神話もまだ存在する。

だが、それはもはや昔話に過ぎない。少なくともイギリスでは。昨年2000人を対象としたYouGov によるアンケートでは、お気に入りのアルコール飲料を尋ねる質問に対し28%もの人がワインと答えた一方、ビールと答えたのはたった23%、スピリッツを選んだのは20%だった(おそらく残りはアルコールを飲まない人とシードル愛好家だろう)。ちなみに投票した人のうち約半数は、イギリス人が好むアルコール飲料はビールという結果になるだろうと想像していた。

政治家たちは今でも、ビールは得票数に貢献する飲み物だと考える傾向にある。フランスですら、ジャック・シラク大統領は公的な場で飲む際はビールにこだわっていた。イギリスの大蔵大臣は代々、同じような理由から年の予算を立てる際にワインを飲むような上流階級の人には高い税金を課し、ビールには比較的低い課税をする傾向にあるのではないかと私は読んでいる。だが彼らは明らかに時代遅れだ。

私は人気の連続ドラマ「コロネーション・ストリート」の1場面でワインがなんの説明もなしに注がれたシーンを鮮明に記憶している(上の写真はオードリーがゲイルにワインを注ぐ場面だ)。20世紀の中でも遥か昔の話である。そしてこの1970年代以降、イギリス人たちは安いパッケージツアーで海外に定期的に行くようになり、専門店に行かなくてもスーパーマーケットの棚からワインのボトルを手に取り、それらの外国語表記を正しく発音できるようになると、3300万人のイギリス人にとって「発酵させたブドウ果汁」は毎日の、少なくとも毎週の暮らしの一コマとなった。

社会経済的なはしごをワインがどれほど下って行ったのかを知る指標の一つは、イギリスでのワインの平均小売価格だろう。私のようなワインのプロはワイン1本に20ポンドから時には100ポンド以上も支払うし、イギリスは高級ワイン取引のハブとして世界的に有名だが、もったいぶって扱われることなくスーパーの棚から売れていくワインの国全体での平均価格は6.22ポンドだ(ほんの2年前までは5.73ポンドだったっが、ポンド安と増税のためそのほとんどを輸入に頼るワインの平均価格は史上初めて6ポンドを超えた)。この6.22ポンドのうち2.33ポンドは税金で、さらに1.04ポンドのVATを引くと、容器、輸送、販売業者の利益、そしてワインそのものに残るのはたった2.95ポンドだ。

イギリスの政府は過去10年間にビールとスピリッツに対する課税がそれぞれ16%と27%ずつ引き上げたが、ワインは39%も増税している。だがワイン愛好家をもっと寛大に扱えばおそらく票をもっと獲得することができるだろう。

専門的な調査会社であるワイン・インテリジェンスによれば、イギリスの成人のうち、年収が2万から3万ポンドの人々の72%はワインを最低でも週1回飲んでいる。

同社が今年7月に行った、自分をワイン愛好家だと考える、無作為に抽出された2000人のアメリカ人に対する調査では、その24%が年収4万ドルを下回っていた。

ワインは今や肉体労働者の飲み物なのだ。

だが、時代に取り残されているのは政治家だけではなく、ワイン業界の多くの人々もそうであると指摘せざるを得ない。ワインを売っている人々は、自分が売っているものばかりに気を取られてしてしまいがちだ。多くの人々がワインの資格を取得し、概して一般のワイン消費者よりもはるかに高い知識を習得し、それゆえに大多数の、特に若い世代の人々がワインをどうとらえているのかを知ろうとしなくなっている。ほとんどの人は、ワインがどう作られるかということよりもワインが彼らに何を与えてくれるのかに興味があるのではないだろうか。

ワインの販売を生業とする者にとって、自宅にソムリエナイフがあるのはごく普通のことだろう。だがワイン商たちはそれを飲むために特別な道具が必要なものを売ることの狂気について、立ち止まって考えたことはあるだろうか。あるいは安価なワインを相も変わらず重くて壊れやすい、二酸化炭素排出量が多く場所も取るガラス瓶というパッケージで販売することのメリットに疑問を投げかけたことはあるだろうか。(Glass dismissed (和訳)参照のこと)

私から見れば代替の、より安価な手法でワインを販売する方がはるかに理にかなっている。缶入りワインはアメリカで非常に人気を博している。なぜ他の地域ではまだなのか?カートンやパウチ、バッグインボックスなども、世の中で販売されているワインの大多数を占める種類のワインには完璧に納得のいく媒体だと考えられる。

我々のようなワイン・ライターは、我々が婉曲的に「デイリーワイン」と呼ぶ種のワインに関して若干のジレンマを感じている。スーパーマーケットはその購買力にものを言わせ、ワインを最低限の価格で揃える傾向にある。だがそういったスーパーマーケットよりも、彼らのような巨人との競合に苦しむ独立した専門店をひいきする傾向にあるのは、彼らの方がはるかに良いサービスを提供し、概して高品質なワインを揃えているのだから、たとえ価格が少々高かったとしても我々にとって自然なことだ。

バーゲン品のような価格のついたワインを推薦する前に、スーパーマーケットがそのワインの生産者を校正に扱ったかのだろうか、と考えを巡らせるのは私だけではないだろう。もちろん、私は以下に推薦する、非常にお買い得な価格のスーパーマーケットのワインの価格交渉にはかかわっていない。ポートや、特にシェリーの生産者たちはとにもかくにも在庫を動かさなくてはならないという理由で、長きにわたりスーパーマーケットのバイヤーたちが提示する馬鹿々々しいほどに安い価格に甘んじてきた。私は心から、ウェイトローズの自社ブランドのシェリーを特にお勧めしたい。

一方でザ・ワイン・ソサイエティが影響する安価なワインをお勧めする場合には私ももう少し自信が持てる。彼らは歴史的なイギリスのワイン購買組合で、その使命は利益を最大限にすることではないからだ(顧客は彼らからワインを購入するために株主として40ポンドを支払う必要があるが、加入して最初に購入したワインに20ポンドのディスカウントが受けられる)。

また、1980年代、ゴルバチョフの反アルコール政策によって引き起こされた大惨事から畑やセラーを復興するため、今世紀に入り大量の資金が投入された東ヨーロッパのワインを買うタイミングとしては今が非常に賢い時期である点も述べておきたい。その結果ワインの価格は今非常に魅力的だ。

パンデミックに伴う外出禁止に伴い自宅でのアルコール消費が増え、オンラインでの売り上げが劇的に増えたという報告にもかかわらず、世界中には余剰の在庫を抱えた多くのワイン生産者たちがいる。レストランでの売り上げがなくなっただけではなく、トランプ大統領が昨年10月に課した25%の関税も大きくのしかかっているのだ。ワインの価格はゆっくりと下降することが予測される。

10ポンド以下のおすすめのワイン
アスタリスクがついているのは今年(ソーシャル・ディスタンスを保って行われた)デカンター・ワイン・アワードでメダルを受賞している。


白とロゼ
Cramele Recaš, Wine Atlas Fetească Regală 2019 Romania
£5.25 Asda 11.5%

Marques del Norte Brut 2018 Cava*
£6 Asda 13%

Drouet Frères, La Marinière 2019 Muscadet
£6.49 Waitrose 12%

Terra Madre Catarrato 2019 Sicily*
£6.50 The Co-op 13%

Via Vinera, Heritage Misket 2019 Bulgaria
£6.95 The Wine Society 13%

Quai de la Lune Sauvignon Blanc 2019 Bordeaux
£6.99 Waitrose until 3 November (overpriced at usual price of £9.39) 13%

Mitravelas, White on Grey Moschofilero 2019 Greece
£7.95 The Wine Society 12%

Le Théâtre Eden, Côtes du Rhône Rosé 2019 Rhône Valley
£8 Marks & Spencer 13%

Poderi dal Nespoli 1929 Famoso 2019 Emilia-Romagna
£8 Marks & Spencer 12%

Ch L'Oiselinière de la Ramée su Lie 2018 Muscadet-Sèvre et Maine
£8.50 The Wine Society 12%

M&S Classics, Mineralstein Riesling 2019 Germany*
£9.50 Marks & Spencer 12%


Paniza, Terrenal Garnacha 2019 Spain
£6 Marks & Spencer 14.5%

Trivento, Reserve Malbec 2019 Mendoza*
£8 Tesco 13.5%

Ch du Rival 2018 Bordeaux
£8.50 Stone, Vine & Sun 14%

Via Vinera, Heritage Mavrud 2017 Bulgaria
£8.50 The Wine Society 13.5%

Les Pierres Dorées, Cuvée Louis Dépagneux 2018 Beaujolais
£8.50 The Wine Society 12.5%

Alovini, Le Ralle Aglianico del Vulture 2017 Basilicata
£8.95 The Wine Society 13%

Stobi Vranec 2018 North Macedonia
£8.95 Tanners 15%

Armenia Wine Company, Yerevan Winemaker's Blend 2016 Armenia
£9.95 Tanners 12.5%

その他の取り扱い業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文

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