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シェリー~忘れられた秘宝

2017年5月27日 土曜日 • 6 分で読めます
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この記事のショートバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

先日、古くからの友人でザ・ワールド・アトラス・オブ・ワインの共著者でもあるヒュー・ジョンソンとランチを共にした。彼は数十年振りにヘレスにあるシェリーの街を再訪したのだが、そこを取り巻く景観の変化に衝撃を受け、まだそこから抜け出せないようだった。

ヘレスからもう一つの主要なシェリーの街、サンルカール・デ・バラメーダへ続く道を縁取っていたブドウ畑が消え去った。シェリーの生産に必要なパロミノ・フィノの総栽培面積は1980年代の三分の二に減少した。世界のシェリーの売り上げは1970年代がピークだった。これは3つの銀行を一日にして買収したことで有名なルマサ(Rumasa)帝国の陰謀によって加速した。彼らはシェリー・ブームの立役者でもあり、その後の崩壊の原因でもある。

私がワインについて書き始めた1970年代、最も多く仕事で訪問したのがヘレスだった。ホテル・ヘレスのプールは海外からのワイン商でごった返していた。当時私はイギリスのワイン業界誌を編集するというチャンスをもらったのだが、これは前の担当者である私の先輩がルイス・ゴードンのシェリー、ラ・イーナ(La Ina)をイギリスへ輸入する会社の支援でデカンター誌を立ち上げるために退職したからだ。

当時有力な高級ワイン企業と言えばブリストルのハーベイ (和訳)で、その財力と賢明な活動はシェリーが時代遅れとなることから救い、一時期非常に人気の高い飲み物であったブリストル・クリームによって支えられていた。アルコールが高く、甘く、濃い茶色をしたそれは、現在では3つの大罪とも呼ばれている。

シェリーの輸出量は1979年、イギリスとオランダが品質のおぼつかない大量のシェリーを輸入していた時代の五分の一以下だ。シェリーを統括する組織であるコンセホ・レグラドールの長であるベルトラン・ドメックからすると、ルマサのエピソードは全てシェリーの歴史の中で「嘆きの幕間」であり、現在の業界は量ではなく質を目指して進むべきだという点でメンバーは合意している。

今になってようやく、スペインはイギリスよりもシェリーを消費するようになってきた。そのほとんどは淡い色で辛口、高いリフレッシュ効果のあるフィノやマンサニージャとして知られるスタイルだ。一方、比較的変化のないイギリスのシェリー市場では相変わらず(私からすると残念なことに)簡単に作れて飲んでも退屈な甘いクリームシェリーやペール・クリームのスタイルが主流だ。

今書いてきたこと全てについて私は憤りを感じる。世界で最も偉大なワインの一つであり、アンダルシアにしかないシェリーはもっと特別な意味を持つべきだし、これほど幅広いスタイルで辛口のワインを作ることは他のどのワインを作ることより難しいのに。

最も似た環境にあるのは同じくアペリティフであるシャンパーニュだ。シャンパーニュ同様シェリーも保水性の高い石灰質の土壌にある畑から作られる。シャンパーニュ同様、シェリーもベースワインを作り、そこから次の工程へ進む。高い技術を要するブレンドからシャンパーニュの泡が生まれ、長いこと樽の中で熟成させてから巧みなブレンドをするのがシェリーだ。もう一つの共通点はその多くのワインがヴィンテージ表記なしに販売されることだろう。これはすなわち、他のワインとは異なりボトルは違えどその見た目と味わいは毎年変わらず、我々ワイン・ライターにとっては取り上げるべき「新しさ」がないということを意味する。

これほど類似点があるにもかかわらず、シャンパーニュは世界的な成功をおさめ、シェリーの売り上げと評価はしぼんでいった。シェリーの活躍の場であるはずのタパス・バーがどんどん増え、数多くのシェフやソムリエが証言するように、シェリーは料理との相性がこの上ないというにもかかわらず。ヴィクトリア・ムーアがその新著ザ・ダイン・ディクショナリー(The Wine Dine Dictionary,)で述べた通り、「辛口のシェリーは世界で最も過小評価されているワインであるだけでなく、完ぺきに食べ物と合うワインでもある」。彼女は辛口のシェリーをアスパラ、スモークサーモン、貝類、そしてほかの多くの料理に合う飲み物だと強調している。

最も使い勝手が良くコストパフォーマンスも良いシェリーはフィノと、それより軽く辛口のマンサニージャで、上の写真では最も色の薄いものだ。両者は樽の中で「微生物学的に」、フロールと呼ばれる風変わりな、水を吸ったパンのような見た目の酵母のクッションの下で熟成される。この酵母はシェリー産地の特別な条件でのみ発達する。広いグアダルキビール川の岸にあるサンルカール・デ・バラメーダではこのフロールと環境がわずかに他の地域と異なるため最も軽く辛口のワインとなり、フィノではなくマンサニージャと呼ばれる。フロールによる保護効果は大西洋の風をボデガに入れることで維持する。端的に言えば空気のコントロールで、ボデガの土の床に水を撒くことで湿度を高く保つ。さらに最も重要なのは系統立てて各樽中のワインの一部を若いワインに入れ替えていく作業だ。このことによって酵母に栄養がいきわたるのである。

この万能な辛口ワインのアルコールはたった15%で、現在販売されている多くのワインと大きく変わらない。そして最近は新しい区分としてさらに軽いナバゾス・ニーポート(Navazos Niepoort)のような、技術的には酒精強化されていないのでシェリーとは呼べないものの、アルコール13%のものもある。フィノやマンサニージャは数年程度しか熟成していないため、ゴンザレス・ビアス(González Byas)のティオ・ペペ・フィノなどはイギリスではどこでも10ポンド以下で販売されている。過酷な価格設定を求めることで悪名高いイギリスのスーパーマーケットのプライベート・ブランドではさらに安いこともある。その存在がヘレスの長期的な健全性に良い影響があるとは思えないが、上質なプライベート・ブランドのシェリーは今日のワインの世界で偉大なお買い得品であるとも言える。

フィノとマンサニージャは歴史的に瓶詰め前に濾過と安定化を行うが、最近の自然を求める流行に伴い、これらワインの高級バージョンをエン・ラマ(En Rama)と呼び、樽から直接飲んだときの味わいにかなり近いものに仕上げる新しい流れも生まれた。今のところシェリー業界はフロールが最も厚い今の時期に多くリリースされるこのエン・ラマ・シェリーを公式な定義として認めるつもりはないようだが、少なくとも、不当なまでに無視され続けたこのワイン産地に年に一度でも光を当てる理由を提供すべきではないのだろうか。

一方、最近ジュリアがSherry - changing the rulesで指摘してくれた通り、コンセホは生産者が特定の畑、すなわちパゴの名をシェリーのラベルに表記できるよう法律を変える計画をしている。広いワインの世界で起こっていることを反映した、地理的特異性への動きは歓迎すべきだろう。

JancisRobinson.comではロンドンで公式な日曜夜のテイスティングを開催し、我々がイギリスのワイン愛好家が注目すべきだと考えるワインを推奨する取り組みを行っている。これまでに4回のバローロ・ナイト、2回のブルネッロ・ナイト、そして先月は初めてのシェリー・ナイトを開催した。

喜ばしいことにチケットは完売で、その類まれな多様性を見せつける良い機会となった。厳選した38本のワインは水のように白いものから最も輝かしく微妙な色合いを見せるトウニー、そして深い茶色まで多岐にわたった。シェリーは無知な人々によって甘ったるい飲み物だと非難されることもあるが、この会では最後の4本だけが甘口と表現できるもので、そのうち2本はこの上なく色の濃い、ペドロヒメネスから作られたシロップのようなワインだった。それ以外のほとんどがスーパーで売られているような平均的な白、あるいは多くの赤ワインよりも残糖ははるかに低い。

今回紹介した色の濃いシェリー、アモンティリャード、パロ・コルタオード、オロロソの中には50年も熟成したものもあった。それらの価格はもちろんその熟成を反映したものではあるが、それでも同様な熟成を行った他の産地のワインと比較すると馬鹿々々しいほどに安い。この利点を今こそ活用すべきだ。

お薦めの辛口シェリー

下記のリストは色の淡いものから濃いものへ、軽いものから重いものへ並んでいる。

Delgado Zuleta, La Goya XL Manzanilla En Rama
£22 per 50 cl Ultracomida Online

Emilio Lustau, Waitrose El Benito Manzanilla Pasada
£8.99 per 75 cl Waitrose (£9.99 from 7 June)

Barbadillo, Pastora Manzanilla Pasada En Rama
£6.99 per 37.5 cl Cambridge Wine Merchants, Taurus Wines

Emilio Lustau, Puerto Fino
£8-9 per 37.5 cl widely available

El Maestro Sierra Fino
About £10 per 37.5 cl Robersons, Woodwinters, Butler's Wine Cellar, Hanging Ditch

Equipo Navazos, La Bota de no 69 Amontillado
£80 per 150 cl The Solent Cellar

Williams & Humbert, Dos Cortados Palo Cortado VOS
£15.99 per 37.5 cl Waitrose online and others

Cayetano del Pino y Cia, Viejisimo 1/5 Palo Cortado
£21 per 37.5 cl The Wine Society

Emilio Lustau, Waitrose Real Dry Oloroso
£8.99 per 75 cl Waitrose (£9.99 from 7 June)

Pedro's Almacenista Selection Oloroso
£13.99 per 75 cl Majestic

Osborne, Sibarita 30 Year Old Oloroso VORS
£22 per 75 cl The Wine Society and others

Salto al Cielo, Estate Aged Oloroso 1/5
£65 per 37.5 cl The Wine Society

その他世界での取扱業者は wine-searcher.com を参照のこと。テイスティング・ノートについてはテイスティング・ノートのデータベース(もはや15万件を超える)を参照のこと。

(原文)

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