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石の香りとテイスティング・コメント

2015年12月3日 木曜日 • 5 分で読めます
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2015年12月3日 パープル・ページのメンバー限定フォーラムでミネラリティに関する話題が再燃したことを受け、2012年のこの記事を再掲したら面白いと考えた。今流行のサリニティ(salinity;訳注 塩気)には触れていないが、そちらは明日のワイン・オブ・ザ・ウィークを参照してほしい。

2012年4月14日 これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。

我々のようにワインで生計を立てている人間なら誰もが、この愛すべき飲み物の感覚的な印象を表すのにどれほど不適切な単語を用いていて、それらは便利ではずれがなく、使っている我々も頭が悪そうに見られることはないとよく知っている。

何十年もテイスティング・ノートを書いたり読んだりしている人間として、私はこのワイン・テイスティング用語がいかに柔軟であるか、そして時代とともにいかに移り変わるかという点に引き付けられる。私は1970年代に初めてワインコラムを読み始めた頃のことをよく覚えている。タイムズのワイン記者があるワインを「四角い」と表現したことにどれほど感銘を受けたか。だが今となってはその記者、パメラ・ヴァンダイク・プライス(Pamela Vandyke Price)が何を言わんとしていたのだろうかと思わずにはいられない。

そして1970年代後半から180年代を通しては「オーキー(oaky訳注:樽の強い)」が頻繁に良い意味で使われていた。小さなオーク樽が大きな流行であり、特にフランス以外のワイン生産者にとって、フランスワインが不動の地位を確立していた高級ワインクラブに食い込むための情熱の象徴でもあった。だが世紀が変わるころには「オーキー」は軽蔑的な意味に変わり、ワインメーカーたちは今多くの労力を注ぎこんで自分のワインにオークの香りが付かないよう注意を払っている。

我々テイスターはワインの香りについて他人に解りやすい言葉、すなわち身近なもので表現する努力をしている。経験上、カリフォルニア人たちは特にわかりやすい表現の羅列に安心するようだ。この例を探していて、私がたまたま思いついたのはナパで最初のワイナリー、ベリンジャーだった。そこでウェブサイトの最初のワインをクリックしたところ、このようなワインメーカーのテイスティング・ノートがみつかった。「2008プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンはフレッシュなブラック・ベリー、ブラック・チェリー、ブルーベリーの若々しさが特徴で、ブラック・ベリーとブルーベリーの鮮やかな香りにトースト、グラファイト、杉、茶色いスパイスの香りがアクセントとなっています。パレット(訳注参照)は豊かで、滑らかに口の中を覆うタンニンはしなやか。豊かでジューシーな果実の芯はカシス、ブラック・ベリー、甘いココア、軽やかで心地よい香りによってさらに際立ちます。」(訳注:次の段落でもあるように本来は「味わい」という単語はpalateだが、誤記が多い。このテイスティング・コメントもpaletteと書かれている)

よくある味わい(palate)とパレット(palette)、さらには荷台(pallet)などの混同はさておき、我々は間違いなくこのワインがブラック・ベリーの香りがするのだと確信する。3回もその表現が使われているのだから。だが同時に、まったくもって不明瞭な「茶色いスパイス」も香りの表現の1つと数えると、少なくとも9つもの味わいがこのワインを表現していて、正直私からすると落ち着かない。さらにワイン初心者はこれらの香りのうち5つすら見つけられなければ、自分がひどく不適切な人間だと感じてしまうのではないだろうか。

同一のワインについて国によって異なる香りの表現がされるのは、テイスティング・ノートに香りの表現を付与する仕事が100パーセント客観的ではないことを示している。ベリーやチェリーはアメリカ人のテイスティング・ノートによく見られる一方で、南アフリカ人は私の経験上唯一、白ワインに常にグァバの香りを感じる。一方多くのアジア人テイスターは西欧のテイスティング・ノートに大いに困惑する。なぜなら全く知らない果実の名前が並んでいるからだ。

良く知られているテイスティング・ノートの中にはある意味ずさんな類語反復として発達してきたものもある。例えば「スパイシー」は我々テイスターが赤ワインのみならずなんとなくスイパイス(茶色であろうとなかろうと)を思い起こさせるワインにしばしば使う言葉で、ゲヴュルツトラミネールのような(実際ライチやバラの花びらのような香りがする)香りの強い品種から作られた白ワインにも日常的に使う言葉だ。これはおそらく、ドイツ語話者ならご存知だろうが「ゲヴュルツ」が「スパイスをかけた」を意味するためなのだが、それはすなわち「スパイシー」だというテイスティング・ノートは基本的に、「そのゲヴュルツトラミネールがはゲヴュルツトラミネールの香りがする」と言っているだけなのである。

テイスティング用語の流行は時に一つの源に行きつくことがある。「ブロックバスター」は一時期ワインのレビューで称賛の言葉として使われてきたが、今では使われない。力を持っていたアメリカ人の評論家、ロバート・パーカーは気に入ったワインを「溢れる果実(gobs of fruit)」と表現するとよく言われていたが、私はその表現は別のアメリカ人、ジェームス・サックリングがワイン・スペクテーターに書いたレビューで使われた言葉だと考えている。その時私は初めて「焦点のあった(focused)」ワインという表現も目にした。また、ワインが「セクシーだ」と表現されるのもよく目にするが、「焦点のあった」同様それがどういう意味なのか全く見当がつかないし、ワインの焦点があったりワインがセクシーになったりするはずがないことはよくわかっている。そして強く確信をもっているのは、ワインをセクシーだと表現する傾向は男性の評論家の方が女性よりもはるかに強いことだ。

最近流行になりつつあるテイスティング用語として思いつくのは、オーストラリアをワインの道へ導いたウェールズ人、故レン・エヴァンスに由来すると思われる。私が理解できる範囲で「線状(line)」はワインの直線的な味わいの肯定的な表現で、濃厚で味わいの幅広いワインの対局にあり、この表現はアメリカ人よりもイギリス人の間でゆっくりと浸透してきているようだ。

一方、比較的最近になって非常に人気の高いテイスティング用語が出現し、数多くのコメントに見られる。「ミネラリティ」だ。最近パープル・ページのフォーラムでの「ワインのミネラリティは事実か、冗談か、創作か(Minerality in Wine: Fact, Fun or Fiction?)」という投稿に最初の4日間だけであっという間に60件ものスレッドが立ち、111件ものコメントが付いた。多くのテイスターにとってワインの「ミネラリティ」は動物、果実、野菜とは全く異なる、何らかの石、とくに濡れた石を思い起こさせる香りや、どこかの科学実験室を思い起こさせる香りである。科学者たちはそのようなワインがブドウの育った土壌に含まれるミネラルを表現しているという魅惑的で単純な発想を否定し、岩石と植物が吸収できる形のミネラルは異なると指摘する。そしてたとえブドウがミネラルと何らかのかかわりがあったとして、ブドウの樹が果実までそれを受動的に運ぶだけの管として働くことはありえないというのだ。

このとらえどころのない特徴は比較的高い酸と関連していると指摘する向きもあるし、白ワインに関しては私もそれが正しいと思う(シャブリやプイィ・フュメ、ザールのリースリングを思い起こして欲しい)。だが、非常に豊かでフルボディの赤、例えばスペイン、カタルーニャ地方のプリオラトなどのようにその固有のシスト土壌を、その特徴的な「ミネラル」の要素を伴うワインとともにリコレリャ(llicorella)と呼ぶものもある。事実、シストはスペイン北西部、フランス南部ルーションの一部、北部ローヌ渓谷のコート・ロティなどでも見られるが、特に強い「ミネラル」感をそこで作られるワインに与えているように私には思える。

一つ確かなことがある。ミネラリティの正体がなんであれ、それはごくごく現代的な現象であるということだ。

優れた「ミネラルな」ワインたち

Clos du Caillou, Les Quartz Châteauneuf-du-Pape
Coume del Mas, Les Schistes Collioure
Domaine de l'Ecu, Expression de Gneiss 2009 Muscadet
Dom Patrick Javillier, Cuvée Oligocène Bourgogne Blanc
Mullineux, Granite Syrah Swartland
Nittnaus, Kalk und Schiefer Blaufränkisch Burgenland
Torzi Matthews, Schist Rock Shiraz

取扱業者はwine-searcher.com. より。テイスティング・ノートはPurple Pages Tasting notes searchからどうぞ。

原文

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