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スイスワイン~スイスフランの陰で

2015年1月31日 土曜日 • 6 分で読めます
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この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている

ジル・ベッセ(Gilles Besse)はワイン生産者に転身したハンサムなジャズ・サクソフォン奏者で、スイス・ワイン・プロモーションの長を務めるテレビ評論家でもある人物で、スイスワインの海外での評価が不十分であると考える一人だ。前回私が彼に会ったのは11月で、彼は自分の仕事の難しさに苛立ち、3か国語で3つのワイン文化を持つ多様なスイス連盟を運営する苦労を語った。

最近のスイスフランの自由化以来、彼の海外での販促資金の価値は高騰したが、スイスワインの海外市場での価格も同様のはずである。もともとスイスワインは長いこと比較的高価だったため、スイス国立銀行が突然対ユーロ介入を終了する前ですら、スイスはワイン生産量のたった1.8%しか輸出することができていなかった。

ワイン・グレープス」で私の共著者でもあるホセ・ヴィーアモス(José Vouillamoz)はスイスのブドウ品種の遺伝学者でもあるが、ベッセの販促をサポートする立場にある。彼はヴァレー(Valais)の、私がこれまで見た中で最も素晴らしく息をのむような美しいブドウ畑の真ん中に住み、国際市場におけるスイスワインの優位性についてエネルギッシュな講演を続けている。彼の主張によると、スイスのブドウ畑の多くは非常に勾配が急で作業が困難な場所にあるため、毎年ヘクタール当たり2000時間の労働が必要となるそうだ。「だからそれを考慮に入れたらスイスワインはボルドーの3倍から5倍の価格がついて当然」なのだそうだ。

前回私が彼のお手並みを拝見したのは国際的な視点から選ばれた12のスイスワインを100人以上の国際的なワイン・ブロガーの前でプレゼンテーションしたDWCC(Digital Wine Communication Conference)例会でのことだった。昨年は湖のほとりのモントルーで開催され、ジル・ベッセはスイスのブロガーをプロモーションに巻き込むことに可能性を見出した。彼らのほとんどはそれまでスイスワインを飲んだことがなかったのだ。その多くは特にホセのプレゼンテーションに続いて40名ものトップ生産者たちが自ら彼らの一連のワインを紹介したこともあり、非常に感銘を受けていた。(写真はホセが真ん中、ジル・ベッセ(右)と並んでおり、ジルの若々しい叔父でありドメーヌ・ジャン・ルネ・ジャーマニア(Domaine Jean-René Germanier)の当主が私たちの小さなグループにヴァレーに復活させた驚くほど急なブドウ畑を案内しているところである。トップの写真と共にザ・ワイン・ソサイエティのユアン・マリー(Ewan Murray)が撮影した。)

私にとって多くのスイスワインをテイスティングするのはかなり久しぶりであり、そこで出会ったワインの多くを心から楽しむことができた(ただし、価格には目をつぶって、である)。最近は驚くべきことに白よりもピノ・ノワール、ガメイ、メルロを使った赤ワイン作る生産者が増えており、これらの品種はスイスで栽培面積の多い4品種のうち3つを占めている。ピノは南部のイタリア語圏を除くスイス全土で栽培されており、この国の賛否両論の主要品種シャスラ、別名ファンダンを超えてしまった。

フランス語圏のスイスに住むワイン愛好家たちはこの品種を崇拝しており、ハンカチサイズと言われる小さな畑ごとの違いを大いに楽しんでいる。これらの畑の多くは急な斜面に苦労して積み上げた石の壁で支えられた段々畑である。この段々畑を復活させた人物によると、再建には1平方メートル当たり600スイスフランもかかるのだそうだ。スイスは私の知る限り収量をトン/エーカーやヘクトリットル/ヘクタールではなく、キロ/平方メートルで表す唯一の国だ。全てのスケールが小さい。サイヨン(Saillon)というヴァレーにある村は世界最小のブドウ畑を誇りとしており、ダライ・ラマ所有の3本のブドウがあるそうだ。何もかもが信じられないほど美しい。ヴォーのブドウ畑はレマン湖の北岸に張り付くように存在する素晴らしいシャスラの故郷であり、ユネスコの世界遺産にも指定されている。

こう言うとスイスの人はいい顔をしないと思うが、スイスの外でシャスラは何の変哲もない、ワインにするよりそのまま食べるブドウだと認識されている。スイス人以外にとってこのブドウはやや味わいに欠け、最も優れた品質のものですらその柔らかなスタイルに慣れるのに時間がかかる。私はスイスのシャスラを最初に口に入れるときいつも、その酸がとても低く感じることに衝撃を受ける。一方で最上のものは魅力的な個性があり、時には塩分を感じることがある。これはもしかしたら、酸の代わりに私の舌が感じているものなのかもしれない。ここでは今でも一般に二次発酵、すなわち味わいを和らげるマロラクティック発酵をシャスラに用いることを推奨しているが、私自身はそれに懐疑的である。モントルーではスイスのシャスラがどれほど熟成するかが議論の的だった。

熟成についてその時点で私には皆目見当がつかなかったが、ロンドンに戻ってからシャスラを生産する最高の村々の熟成したサンプルを、2008から1976に遡ってテイスティングする機会に恵まれた。まずラベルが良かった。非常に独特で変化に富み、中には現代のマーケティング会社が模倣したがるようなビクトリア朝風のものまであった。私は出されたワイン好きになろうと努めたが、たった一つ、リュック・マッシー(Luc Massy)の1984のもの、デザレ(Dézaley)のフェル(Fer)だけが、古かったが魅力的な豊かなアロマのカクテルだと感じ楽しむことができた。残りはあまりに香りが消えてしまっているか、私にとっては古すぎるものだった。「Chasselas in all its glory」も参照してほしい。

ヴァレーのブドウ畑はレマン湖の東、ローヌ渓谷の上流にあるが、私がブロガーの会合の後に訪れた秋の晴れた日に、そこは信じられないほど美しかった。私たちは道路沿いのエノテーク(oenothèque)を通りがかった。地元の人が日曜の朝、日の光の中でワインをすすり、スナックをちびちびとかじる地元のワインバーである。フランスとの国境を超えたら、おそらくありえない光景だろう。畑はきれいに整った黄金、茶色、オレンジ色のパッチワークだった。パラグライダーが静かに上空を舞い、雪をかぶったアルプスがその向こうで輝いている。畑は文字通り日光浴を楽しんでいるようだった。目を閉じ、ゆっくりと背をもたせかけ、日の光をいっぱいに浴びられるように。一部、ネットで丁寧に覆われている畑は主要な収穫期のあともわざとブドウを樹上に残して干しブドウ状にし、フリトリ(flétri)と呼ばれる甘口のワインを作るためのものだ。ヴァレーのブドウ畑は年平均2500時間もの日照を享受(ブルゴーニュは2000時間を切る)し、灌漑は必須で非常に高価だ。

そこは文字通りヴァレーの土着のブドウ品種の秀逸な展示場だと言える。世界で時代の先を行っている地域でもあり、1990年代という早い時期から絶滅しかかっていた地元の品種を調査し、救ってきた。そのためヴァレーのフュリ(Fully)村は(プティ)アルヴィーヌ(Arvine)というグレープフルーツのような香りが魅力的な品種で有名だ。この品種はスイスの個性的な土着品種を含む20もの変化に富んだブドウの中で栽培面積がもっとも広い。レトロン(Leytron)村はウマーニュ・ルージュ(Humagne Rouge)が有名だし、ヴェトロ(Vétroz)村は香りの強いアミーニュ(Amigne)種の王国である。どれも素晴らしく、スイスらしい。

スイスの真のワインの宝はその土着品種にあるだろう。例えば白ワインならコンプレーター(Completer)や非常に珍しいレーズ(Rèze)(レーズは世界に2.7ヘクタール、すなわち7エーカーしか栽培されていない)。赤ワインならコルナリン(Cornalin)やプティ・ロバート/ロベス(Petit Robert/Robez)などだろう。パイエン/ハイダ(Païen/Heida)はゲヴュルツトラミネールの親戚であるサヴァニャンのスイス名である。

イギリスのアルパイン・ワインズ(Alpine Wines)やアメリカのニール・ローゼンタール(Neal Rosenthal)のようなスイス専門のインポータの仕事は容易ではない。しかし、好奇心旺盛なワイン愛好家の皆さんはこれを見逃してはならないだろう。ロンドンのハンツワース・ワイン(Huntsworth Wine)もイストワール・ドンフェル(Histoire d'Enfer)の秀逸なワインを販売している。

お気に入り

以下のワインはおおよそ西から東に州ごとにまとめてあるが、世界品質のものである。わかりやすいようにブドウ品種はイタリックにしてある。

白ワイン

Domaine Grand'Cour, Grand Cour Blanc (Sauvignon/Kerner) 2013 Geneva

Bolle, Collection Chandra Kurt, Yvorne Grand Cru Chasselas 2011 Vaud

Domaine La Colombe,Brez Chasselas 2013 Vaud

Blaise Duboux, Haut de Pierre Dézaley Chasselas 2013 Vaud

Pierre-Luc Leyvraz,Dézaley Grand Cru Chasselas 2013 Vaud


L'Orpailler, Chablais Petite Arvine 2013 Vaud

Marie-Thérèse Chappaz, (dry) Petite Arvine 2013 Valais

Didier Joris, Arvine 2013 and Païen 2011 Valais

Domaine des Muses,Tradition Heida 2013 Valais

Domaines Rouvinez, Ch Lichten Petite Arvine 2002 Valais


Weinbau Schwarzenbach, R3 Raüschling 2013 Zürichsee

Weingut Donatsch Completer 2012 Graubünden

赤ワイン

Domaine Grand'Cour Merlot 2011 Geneva

Blaise Duboux,Epesses Plant Robez 2013 Vaud

Domaine Mermetus Plant Robert 2013 Vaud

Clos de Tsampéhro, Rouge Edition I Cornalin and others 2011 Valais

Jean-René Germanier Cornalin 2012 Valais

Histoire d'Enfer, Valais (amazing range of Pinot Noirs and Humagne of both colours)

Cantina Kopp von der Crone Visini, Balin Merlot 2009 Ticino

Peter Wegelin, Malanser Blauburgunder Reserva 2011 Graubünden

原文

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