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ヴィーニャテロス~かいじゅうたちのいるところ

• 5 分で読めます
Viñateros Spanish wine tasting at the Lindley Hall in London, February 2020

この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。タイトルは記事の最後にあるモーリス・センダックの絵本にちなんだ。

「こんなことはスペインで起こることはないでしょうね」第一線で活躍するスペインのワイン・ライター、ルイス・グティエレスは先月末、スペインのワイン生産者がひしめくロンドンの王立園芸協会のホールを見渡してつぶやいた。

私たちは「ヴィーニャテロス~スペインのワイン革命」と名付けられたテイスティングに参加していたのだが、このテイスティングは(詳細はViñateros - bigger and even betterを参照のこと)めったに心を動かされることのないイギリスのワイン業界人たちがエネルギッシュに、ひっきりなしに行き交うテイスティングだった。このようなテイスティング
は他には毎年9月に開催されるNew Wave South Africaのテイスティングぐらいしか思い当たらない。ロンドンで最も思慮深いワイン商、サイモン・ファー(Simon Farr)は私のところへやってくると会場の様子を見て「ビベンダム・ワインをもう一度始めたいぐらいです。最近では素晴らしいワインの選択肢がこんなにあるんですから」。と話した。

若きマスター・オブ・ワインでアラゴンの生産者でもあるフェルナンド・モラはグティエレスと同じことを指摘し、スペインではワイン業者がライバルと共同して各自の最高のワインを顧客に提示するようなイベントを行うなど夢のまた夢だと話した。だが今この瞬間、ロンドンで開催されている最大級のヴィーニャテロスはイギリスに輸入されているスペインワインの粋を集めたものであり、14以上のインポータが集結し、(ここがカギだ)ホールに設置されたテーブルで注がれるワインには厳しい基準が課せられていた。

そこには大量生産ブランドは全く(さらにはリオハやリベラ・デル・デュエロなどの著名な赤ワイン生産地のワインもほとんど)なかった。このイベントで紹介するためには、ワインはブドウを自ら栽培している生産者でなくてはならず(読者の皆さんが考えているよりもはるかに少ない)、固有品種が望ましいとされていたためだ。生産者は少なくともサステイナブルな栽培法を導入していなくてはならず、有機ビオデナミが望ましい。さらにワイン生産に関してもルールがある。ワインメーカーは手の込んだ介入を多く施すワイン造りの技法を用いるのではなく、畑そのものを表現することに力を入れていなければならない(当然新樽が使われているワインはごくわずかだった)。発酵は購入したものではなく自然の酵母で行い、添加物は「正当な理由のあるもののみ」が許され、基本的に亜硫酸の添加は最低限のみ許されている。

イギリスのワイン・インポータ、インディゴがこのアイデアを思いつき、他のインポータにこの素晴らしく有意義なコラボレーションを呼び掛けた。それに賛同したインポータたちがヴィーニャテロス参加して欲しい生産者に参加を提案したという具合だ。彼らの名称一覧は審査を受けるためマドリードに拠点を置き二か国語でウェブサイトSpanishWineLover.comを運営するアマヤ・セルベラに送られた。彼女はワインがその地域で最高品質のものであるかどうか判断する力を持ち合わせていた。提案されたうちのいくつかのワインは却下されたものの、76もの生産者がお眼鏡にかない、ロンドンへワインを持ってやってきたのだ。

多くの一般的なワイン・テイスティングがこの王立園芸協会のリンドリー・ホールで開催されるが、今回のイベントはかなり異なった様相を見せていた。巨大な垂れ幕もけばけばしい店頭装飾もない。どちらかと言えば見た目はあか抜けないものだった。見渡す限り、スーツを着ている者はなく、変わったビーニー帽が目に入った。あくまで各地のテロワールと、馴染みのない固有品種にこだわってスペインワインを切り取り、その側面を見せるイベントなのだ。公的な統計によるとスペインはリオハとリベラ・デル・デュエロの主要品種であるテンプラニーリョに相当に偏った依存をしている。だがここリンドリー・ホールでは、新星ワイン生産者たちの軌跡が明確に示されていた。その多くは小規模で、他の国でも同様な動きがあるように忘れ去られていた地元の品種を発掘し、化学農薬と技術が出現した20世紀以前に行われていた栽培や醸造の手法に回帰している。テイスターたちはほんの10年前には耳にすることがなかったであろう「エレガント」「繊細」「細かやかな」などという単語を口にしていた。

そこにはスペインが、いやスペインだけがワイン愛好家に提供することのできる新しい自信が見え隠れしていた。グティエレスがこの動きを象徴する、リベラ・デル・デュエロで作られる非常に魅力的で長期熟成も可能な色の薄いクラレットも含むワインに焦点を当てたマスタークラスの冒頭でこう述べていた。「我々はフランスばかりを追いかけていたんです。最も困難だったのはその劣等感でした」。

これほど大きな国土を持つ国だから驚くことではないが、産地ごとの違いは非常に大きい。降雨量の多く緑豊かな北西部からは暑く乾燥した国というイメージのスペインから想像もつかないワインが作られている。アルバリーニョは大西洋からの風が吹きつけるリアス・バイシャスを担う品種で、ガリシア・ワインの使者と呼べるものだが、ヴィーニャテロスが示した通り、それは物語のほんの一部でしかない。ミーニョ川を挟んだヴィーニョ・ヴェルデの主力であるロウレイラ、トレイシャドゥーラ、カイーニョ・ブランコなどの品種は、リアス・バイシャスでも栽培されている。ゴーデリョで作られた白ワインはさらに本格的で長命であり、特にバルデオーラスのものが最良だ。

さらに、魅惑的でアロマティックで、食欲をそそる赤ワインもスペインの片隅で見つけることができる。ムラトン(別名フアン・ガルシア)、メレンサオ(ジュラではトルソーと呼ばれる品種)、そして特筆すべきがメンシアだ。メンシアはガリシアから少し離れたビエルソの主要品種であり、非常に樹齢の高いブドウという豊かな遺産と、その栽培に適した地勢、小規模だが熱心な生産者たちのおかげで今波に乗っている品種だ。

現在のスペインのワイン・シーンが心躍るのは、品種よりもそのテロワールに関してという意味が大きい。さらに、土地とブドウのユニークな組み合わせもその魅力の一つだ。すなわち、個々の要望にセラーが応えること、それはすなわち長期の樽熟成のような公的な基準を無視することすら厭わない点だ(スペインは最高のワインは樽で長く熟成したものであるという信念にいまだにとらわれている)。だからヴィーニャテロスで提供されていたワインの非常に多くが単にヴィーニョ・デ・エスパーニャと表記されており、詳細な産地名の記載がなかった。

私がカナリア諸島のワインを初めてテイスティングしたのは2004年のことだが、今回のヴィーニャテロスにはその最高峰の4つの生産者も参加していた(もちろん、現在のスペインのワイン・シーンのごく一部に過ぎないのだが)。さらにスペインの革命の波がシェリーの故郷、アンダルシアに及んでいることを示す3つの生産者も参加しており、単一畑のワインや、酒精強化をしていない軽やかな白ワインなど、彼の地の閉塞も破られつつあるようだ(Jerez unfortified - a glimpse into the future?も参照のこと)。

事実、スペインの新星ワインの未来は明るい。


素晴らしいスペインの新星ワインたち

白ワイン
Borja Perez Viticultor, Viduenos Artifice 2017 Ycoden Daute Isora
£18.08 Justerini & Brooks

Dominio do Bibei, Lapola 2017 Ribeira Sacra
£24.50 VinCognito

Barco del Corneta, Parajes del Infierno La Silleria 2017 Vino de la Tierra Castilla y Léon
£34.10 Indigo Wine

Dominio del Águila Blanco 2015 Vino de España
£59.80 Hedonism, Bottle Apostle

赤ワイン
4 Monos Viticultores, Tierra de Luna 2017 Vinos de Madrid
£19.18 J&B

Bodegas Bernabeleva, Navaherreros Garnacha 2017 Vinos de Madrid
£19.49 Hay Wines, Herefordshire

Guimaro, Camino Real 2017 Ribeira Sacra
£21.90 Les Caves de Pyrène

Domaines Lupier, El Terroir 2015 Navarra
£22.95 Berry Bros & Rudd

Daniel Landi, Las Uvas de la Ira 2018 Méntrida
£26 The Laughing Heart, The Sampler Islington

Dominio del Águila, Picaro del Águila Clarete 2016 Ribera del Duero
£27.50 Hedonism, Vagabond

Remelluri Reserva 2012 Rioja
About £35 Noble Green, Forest Wines, Bottle Apostle, Hedonism

Casa Castillo, Las Gravas 2017 Jumilla
£37.60 Indigo Wine

Castro Ventosa, Valtuille Rapolao 2015 Bierzo
£41 Indigo Wine

テイスティング・ノートはViñateros - bigger and even betterを、国際的な取扱業者についてはWine-Searcher.comを参照のこと。

かいじゅうたちのいるところの絵本の表紙

原文

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