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ダリア・アントネンコ (Daria Antonenko) 著 ダリア・アントネンコ (Daria Antonenko)はウクライナ出身のワイン専門家 / DipWSET、コート・オブ・マスター・ソムリエ受講生 / ワイン審査員、ジェラール・バセット財団 (Gérard Basset Foundation) 奨学生である。
テルティ・クルク：狐の尻尾と海の香り
告白しなければならない。ワインが私の職業になって以来、ボトルの底に答えを求めるロマンスは意味を失った。その瞬間の詩情は体系的なテイスティング・アプローチに道を譲り、それとともに大人になること、戦争、ロンドンへの移住、そして故郷オデーサ (Odesa) への深い憧憬がやってきた。
テルティ・クルクを初めて味わったのは、ランゲロン・ビーチ (Langeron beach) の、海塩と揚げたヒメジ、そして午後遅くの心の交流の香りがする、太陽に漂白されたベランダでのことだった。地元のワイン生産者によると、テルティ・クルクはトルコ語で「狐の尻尾」を意味し、細長く、ふわふわとして、わずかに湾曲したブドウの房から得られた詩的な名前だという。しかし実際のところ、これは唇に晩夏の絹のような痕跡を残すワインなのだ。
グラスの中では淡い麦わら色をしている。香りは熟した黄色いプラム、干し梨、青いアーモンド、野生の蜂蜜、オレンジの皮、そしてヨウ素のタッチ。まるで海風そのものがボトルの中に閉じ込められたかのようだ。
その同じ海風が、幼少期にプリモルスキー大通り (Primorskyi Boulevard) を歩いているときに私の髪をかき乱していた。今では夢の中で私を訪れる風で、特に痛いほどホームシックを感じる日にやってくる。
一口飲むと、生き生きとした酸味、軽やかなオイリーなテクスチャーがあり、他のすべてが背景に消えていく。締切、やることリスト、ブタクサへのアレルギーさえも。残るのはセージの微妙で長く続く余韻で、塩とミネラル感の痕跡がある。派手さはないが、信じられないほど正直だ。
テルティ・クルクには、ソーヴィニヨン・ブラン (Sauvignon Blanc) のような写真映えする魅力や、シャルドネ (Chardonnay) の洗練された贅沢さはない。しかし、頑固で、オデーサらしく、屈しない独自の魅力がある。人を喜ばせようとはしない。ただ存在するだけだ。そしてその静かな真正性にこそ、真の美しさがある。
テルティ・クルクは黒海地域、特にベッサラビア (Bessarabia) の土着品種で、ギリシャ、トルコ系、ブルガリア、モルドバ、スラブの伝統が歴史的に交差してきた場所だ。古代からブドウが栽培されてきた土地で、地元のブドウ品種はしばしば文書による記録を欠き、代わりに口承によって世代から世代へと受け継がれてきた。20世紀にはほぼ消滅し、工業的なワイン造りには「地域的すぎる」として退けられた。しかし、小さな裏庭のブドウ畑と年配世代の記憶の中で、静かに慎ましく生き延びた。
ウクライナ南部の石灰質と砂質の土壌、黒海沿岸近くで最高のパフォーマンスを発揮し、そこではブドウの樹が文字通り海の空気を呼吸している。晩熟のブドウで、忍耐と注意深い手を必要とする。早すぎる収穫では個性のない鋭い酸味しか得られず、遅すぎると新鮮さを失ってしまう。
近年、十分に大胆で、おそらく少しセンチメンタルな一握りのワイン生産者たちが、テルティ・クルクを再び脚光を浴びせ始めている。ワインのトレンドとしてではなく、保存の行為として。
テルティ・クルクはさまざまなスタイルで造られる。スパークリングでも、スティルでも、フレッシュでも、熟成させても。しかしいずれにせよ、結婚式や企業パーティーのためのワインではない。静かな瞬間のためのワインだ。思索にふける夜のために。あなたをよく知りすぎている人との心からの会話のために。
拍手や賞を求めない。本質的に内向的なのだ。そして多くの内向的な人々と同様に、豊かで激しく正直な内なる世界を秘めている。あなたが歩み寄る意志があるならば。
私にとって、テルティ・クルクは単なるブドウではない。鏡なのだ。故郷からのささやき。かつての私と、今もなりつつある私との間の液体の橋。黒海とヒメジの揚げ物の香り、祖母のキッチンから響く笑い声、古い友人たちの温かさを運んでくる。それは回復力について、ユーモアについて、オデーサが一言も発することなく教えてくれるすべてのことについて語っている。
テルティ・クルクは価値観についてのワインだ。アイデンティティについて。そして最も暗い時間が本当に夜明け直前にやってくるという真実について。
もしあなたが黒海の岸辺に立つことがあったら、唇に塩を感じ、髪に風を受け、おそらく決して存在しなかったかもしれない何かへの静かな痛みを抱いて、テルティ・クルクを一杯注文してほしい。
それはあなたを理解してくれるだろう。
メイン画像のテルティ・クルクの房は、著者から提供されたものである。
