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ワイナリーの金と利益と経済的持続性

• 4 分で読めます
Tall trees bordering vineyards in Burgundy, silhouetted against the sun.
Photo by Charles O'Rear, Getty Images.

訳注:本記事はジャンシス・ロビンソンの書いたものではなく、第3者によるジャンシス・ロビンソンドットコムへの寄稿ですが、非常に意義のある記事と考えられたため、ジャンシスと、原著者であるポーリン・ヴィカールに許可を頂いて翻訳し、掲載しています。

脱成長経済学に例えられるような、破壊的(Disruptive)かつ持続的な経済システムに関する理論及び実践とも言えるエコロジカル経済学(Ecological economics)は、今後我々が頻繁に耳にすることになる話題だろう。高級ワインのシンクタンクであるARENIグローバルのディレクター、ポーリン・ヴィカールがワイン生産とそれに関わるブドウ栽培において何が「成功」であるのか、考察し、寄稿してくれた。

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私がこの世に生を受けたのは40年ほど前、ブルゴーニュのあるワイン生産者の家であり、そこで育った。両親は常に自社の経営に振り回されており、「利益をあげること」あるいは「経済的な成功」が何なのか、おそらく一度も考えたことはなかったと思う。彼らは住宅ローンを毎月支払うことができ、たまにトラクターを新調できたらそれで満足だったのだ。

フランスではよくあるように、私の両親も家族でワイナリーを経営していた。この家族経営という考え方は、当時と今では大きく意味が異なっているように思う。

南アフリカにあるライナカ・ワインズのオーナー、ヨハン・ライナカ(Johan Reyneke)が先日私にくれたこんな言葉を引用したいと思う。「サステイナビリティには3つの要素があり、それぞれ異なるタイムラインで動いている。(その中で)「自然」、それに続いて「人材」は、最大限利用するだけ利用して逃げ切ることができる要素かもしれない。だが「資金」は、それが底をついたとたん唐突に終わりを迎えるものだ。」この言葉を聞いて私はふと自分に問いかけた。「収益性と経済的持続性とは別のことなのだろうか。そしてそれは両親の時代と今では違いがあるのだろうか」と。

家族経営のワイナリーの収益性

かつて家族経営のワイナリーが目指すのは家族の生活を維持することだった。生産した製品の一部を売り、残りは家族のために使うものであり、家計とビジネスの間に境界線はなく、すべてとは言わないまでも、業務のほとんどは家族の誰かが担うものだった。

この構造には問題がある。すなわち、家長だけが社会的地位を所有するということだ。私の家がまさにそうだった。父には社会的地位があった。しかし私と、兄(弟)、そして最も重要なことに毎日働きづめだった母ですら、単なる無償の労働力でしかなかった。私たちに収入はなく、帳簿に名前が載ることもなかったのである。

それに変化が起きたのは2005年、フランス政府が「共同経営者(conjoint collaborateur)」という肩書を造った時だった。これによって農家の配偶者は法的に社会的地位が認められ、離婚したいと考えた時に特に重要となる自分自身の年金を得ることができるようになった。

多くの人々はこれをポジティブな変化だと考えたが、皆がみな、この変化に適応できたわけではなかった。最近の例を挙げると、私はあるブルゴーニュのワイナリー経営者との取引を停止した。彼が「余計な支出になるから」と妻に法的な社会的地位を与えることを拒否し続けたためだ。皮肉なことに彼は早い時期からビオデナミを導入してきた人物だ。環境にはそれほど関心が向けられるのに、自分の妻になぜ少しも関心を向けようとしないのか、私には理解できなかった

ブドウ畑の経営に関する変化はまだある。労働力が無償で得られた時代には、エクセルでの管理も要らずビジネスのスキルも不要で、個人として働くことでリスクを最小限にすることができたという点だ。

フランスの農業環境に起きた文化的革命

現在のフランスでは、かつての「paysans(農民)」を「exploitants agricoles(農業経営者)」と呼ぶ。この呼称変更はこの階級全体における完全な変革を非常に明確に表していると言える。その言葉が「国と土地に根ざす」という語源だったかつての「paysans(農民)」は今、「agricultural exploiters(農業経営者)」と呼ばれるのである。これら新しいフランスの「経営者」の80%は伝統的な家族経営のスタイルから抜け出している。すなわち、家族の1人だけが自社で働き、他の家族は「外部」から収入を得ているのだ。彼らのような「経営者」は外部から労働力を雇い入れる必要があり、当然給料と税金を支払う義務が生じる。このことは、マネージメントのスキルを求められることを意味するし、経済的な才覚も求められることとなる。

これは私の父のような「ヴィニュロン」には劇的な変化だったと言える。なぜならヴィニュロンのスキルだけでは「本当の意味でのビジネス」が成り立たないことを意味するからだ。

これはニュージーランドで短期間に成功を収めたフェルトン・ロードのナイジェル・グリーニングにインタビューした際、私自身が非常に大きな衝撃を受けた事実でもある。彼が言うには、最も大事なことは数字を正確に把握することだそうだ。すなわち、どれほどの量のワインを造りたいか、そのためにワインメーカーであるブレア・ウォルターが物理的に一人で管理することのできる樽の数はいくつなのか、ということだ。それらを基に、ワインの販売価格を決めるのだという。

私の父はシンプルで、そんな風に考えてはいなかった。だから自分だけで会社を回している古いモデルから新たなビジネス・モデルへの変化に適応することができなかった。そして私自身は両親が一度も「成功とはなんなのか」と考えたことがなかったことが原因の一つだと強く感じている。

「成功の定義」が進化すべき必要性

農業、そしてワイン用ブドウ栽培という分野における経済的な成功の定義は決して世界一律のものではない。文化的背景が収益性の理解に与える影響は広く様々な文書にまとめられている。だが私自身が経験上毎日のように感じるのは、「農家」という言葉は頻繁に使われるものの、実際その言葉はワイン用ブドウ畑にまつわる多様な経済状況を指すものであり、その「状況」は世界中のワイナリーで全く異なるという点だ。

一方、そうした違いも、歴史的な状況も踏まえたうえで、あえて私は「経済的な成功」の定義は進化すべきだと提案したい。

私は昨年の後半を持続性と、高級ワインの未来にそれがどんな意味をもたらすのかに関する執筆に費やした。この件についてARENIで行った大量のインタビューで明確になったことが一つある。ワインメーカーであれ、私の両親のように伝統的な家族経営モデルで生産を行ってきた高級ワインの生産者であれ、「exploitants agricoles(農業経営者)」のように「まっとうな」企業を経営しているものであれ、誰もが新たな課題に直面し、新たなリスクを担っているということだ。ワイナリーを維持し、発展させることは世界のどこであったとしても新たな環境的、そして社会的コストを考慮しなくてはならないのである。

この文脈で言えば、経済的な成功とはもはや利益(どれほど自分が幸せであり、ステークホルダーを幸せにできるかということ)だけで議論すべきことではなく、経済的な持続性を考慮すべきであるということだ。ワイナリーが明日も存在し続けるためにどれほどの資金が必要で、そのためにどのように利益を使うべきなのかという観点が求められるのだ。

ワインの世界で金、マージン、経済的な成功を議論することは容易ではない。その理由は我々の中にまだ謙虚さという文化を育んできたカトリックの伝統が残っているからかもしれない。あるいは、税金制度に感づかれたくないことがあるからかもしれない。そして数字を直視することで自分たちが実は持続可能ではないことを認めることが辛いからかもしれない。

だが私自身は強く信じたい。これらの課題について、もっと話す必要があることを。さらに今定義されている(されていないとしても)経済的な成功に疑問を抱き、挑戦し続け、経済的な成功に求められるスキルについて議論する必要があることを。私の父はこの点で助けを必要としていたはずだし、彼が唯一の人ではないと信じている。

以上の考えと更なる考察はすべて、2023年1月24日に発表されたARENIグローバルの白書「Rethinking Fine Wine」にまとめられている。

原文

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