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純粋な喜びを得られる2009 ボルドー、ただし相当の出費は必要

Saturday 9 March 2019 • 5 分で読めます
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この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。ファー(訳注:ファー・ヴィントナーズ)とBIワインズが企画したテイスティングに基づく全222本に及ぶ詳細なテイスティングノートとスコア、2009左岸赤右岸赤甘口白それぞれの飲み頃については各リンクを参照のこと。

私は毎年の初めにトップ・ワインの数ヴィンテージをテイスティングするのだが、その際に同席するボルドー専門のワイン商やコメンテータたちは非常に意地の悪い集団だ。ワイン商は特に、自分たちのテイスティング・コメントを公開する必要がないこともあり、そのコメントは徹底的に無礼で、そのスコアはこの上なく厳しい。

彼らは全員男性でイギリス人であるため、人を見下すことで優位に立つような風潮はある程度存在する。だが先日は私が彼らと同席してきた長い経験の中で初めて、彼らが2009の最高の赤ワインにおいて人と自然がなしえた偉大さに茫然とするのを目にした

2009のようにブドウが完熟したヴィンテージの場合には人の介入は通常よりも多くなる。それは気候のパターンが通常と異なるためだ。だが心地よく冷涼な冬と比較的雨の多い春のおかげでブドウは健全に育ち、地下水脈の水の量も十分蓄えられていた。そのあとは穏やかに安定し、決して極端ではない温暖で乾燥した夏が、2009というヴィンテージを「デッキチェアー・ヴィンテージ」と言わしめるようになった。すなわち、畑で湿度や病気と闘わずにすむからだ。

ブドウは順調に成熟し、果粒を膨らませる雨はほとんど降らなかったため果皮の果汁に対する比率は高く、色素、タンニン、味わいすべてが非常によく抽出されたワインとなった。保水性が高くない軽い土壌の地域では、雨が降らなかったことでブドウにあまりに大きなストレスがかかり、その成熟が止まってしまう場合もあったが、それを救うような軽い降雨があり、そして人間の重要な役割である収穫のタイミングを最適なタイミングで決められるよう、この上なく晴れて暖かい秋が訪れた。早熟なメルローの中には酸を保つために早く収穫を行ったものもあったが、左岸(メドックやグラーヴ)の生産者たちはカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としており、すでに凝縮したブドウがさらに凝縮感と成熟を増していくのを9月終盤から10月初頭にかけての熱波の中で見守るというこれまでにない贅沢を味わうことができた。雨が降らず、気温の急降下と言う危機もなかったため、彼らはいつ収穫するのか、最適な時期を自分で決めることができたのだ。

2009の収穫量もまた十分に多く、野心的な生産者の多くがその主力とするワイン、いわゆるグラン・ヴァンの品質を高めるためにあらゆることを試す余裕と意識をもつことができ、最高のロットのワインだけを使うことができた。このヴィンテージはまた、中国の投資家たちによる本格的な投資の新しい波がボルドーに到達した最初のヴィンテージでもあり、セオリー通り、その最高の価値とこの上なく高い価格を正当化するため、評論家たちから高得点をもらいに行くために躍起になった年でもあった。1級シャトーはさらにセカンド、あるいはサード・ワインの品質向上にもこれまでになく真剣に取り組みはじめた。

主にアジアからの強い需要のおかげで、また明らかに高い品質ということもあり、まだ出来立てのワインが翌春にはプリムールで記録的な価格で提供されることとなった。だがこれらの新しい投資家たちをがっかりさせたことは、これらから利益を得るには何年もの時間が必要となったことであり、市場では今でも最も価格の高いヴィンテージとなっている(下のLive-Exのグラフ参照のこと)。1級シャトーなどは一般的に、それらが2010年に売り出された当初よりも現在の方がはるかに価格は安いのである。

最高の赤のボルドーは2009ヴィンテージの中でも当然ぜいたく品の範疇に入るわけだが、現在テイスティングした中で最高のワインの状態から判断すると、残念ながらおそらくそれらはその価値があると認めざるを得ない(ワイン投資家ではなくワイン愛好家と言う立場から正直に言うと、私は全ての人に1級シャトーが購入できる価格になって欲しいと考えている。その意味で残念なのだ)。

とはいえ、2009はどれでも均一に偉大なわけではない。全体的な法則として、土壌が重いほどブドウは夏の干ばつ(2005ほどではないが)と暑さ(2003ほどではない)に耐え得る要素を持ち合わせていたと言える。だが一部のシャトーではブドウが明らかに繊細さを欠いていたし、中には収穫が遅すぎたためにレーズン化してしまったと思われるものもあった。通常これほどの数のボルドーをテイスティングする際に問題となるのはコルク臭だ。だが2009に関しては150本を優に超えるワインをテイスティングしたが、主な問題は酸化だった。それは特に右岸のポムロールとサンテミリオンに多く見られ、10年ほど経ってからようやく飲み頃になるべき上質なボルドーの一般的な常識と比較して遥かに早く熟成が進んでしまったことを示すと言えるのではないだろうか。

保水性の高い粘土質土壌が有名な右岸では、独自路線を行くペトリュスは別として、メルローにフレッシュさを与えるためにわずかにカベルネ・フランをブレンドしたものが功を奏しているように思われた。

グラーヴでは、1級格付けであるオーブリオンとその兄弟分であるラ・ミッション・オーブリオンはどちらも素晴らしかったが、前者はこれまでの中では珍しく、後者よりも保守的だった。

メドック南部のやや軽い土壌ではマルゴーの中でもあまり有名でないワインの方が北部よりもがっかりさせられることが多かったように思う。とはいえ、マルゴーの最高級のシャトーは大きな喜びを与えてくれるものだったし、1級であるシャトー・マルゴーなどは間違いなく壮麗であり、これは2009年からサード・ラベルを作りその収穫の4分の1を回してしまうほどになったことも一因と考えられる。

一方でこのヴィンテージの成熟度とアペラシオンの見せるフレッシュさとわずかな固さという、この上なく偉大な組み合わせを見せつけたのは土壌の湿度の高いサンテステフだ。今回のヴィンテージで最高にお買い得と思われるものはこの周辺であまり知名度の高くないもので、サンテステフやオー・メドックに区分されるものもあれば多くは我々が最近テイスティングしたものよりも格下のクリュ・ブルジョワとされるものだ。クリュ・クラッセの中ではモンローズとコスデストゥルネルの両方が、最初は成熟が進み過ぎてからの収穫なのではと思われたにもかかわらず、非常に良いことがわかった。だがモンローズの隣人で過小評価されがちなメイネイ、レゾルムドペス、フェラン・セギュールなどはすべて1本40から50ポンドであるにも関わらず、非常に印象的で、このヴィンテージにしてはめずらしく若々しさを保っている。

サンジュリアンのワインにもポヤックよりは若々しさを感じられたし、それには威厳あるバルトンや二つのレオヴィル、このヴィンテージでとくに野心的なデュクリュ・ボーカイユなども含まれる。姉妹シャトーであるサンピエールやグロリアも非常に出来が良く、親しみやすい。

ポヤックの最上のものとしては人々を魅了してやまないラトゥールとそのセカンド・ワインであるレ・フォール・ド・ラトゥールが突出していた(これは市場も認識していた通りだ)が、ラフィットとムートンもまたこの上なくスリリングで、価格も1本700ポンド程度と馬鹿々々しいレベルだ。それよりは値ごろ感があるもののそれでもまだ高いピション・バロンは200ポンドを切る程度だし、とくにグラン・ピュイ・ラコストは1本100ポンド程度であることからすると、ポヤックの2009としては比較的お買い得だと書かざるを得ないだろう。

魅惑的な2009の中でのお買い得

ボルドーの中でも過剰に高値のついたヴィンテージであり、多くのマイナーな銘柄は入手不可能である点を心に留めておいてほしい。だがもしシャトー・カプベルン、ガスクトン2009サンテステフをプリムールで私のおすすめ通り購入していたら、後悔はさせていないと思う。掲示板の2009ボルドーに関するこちらのスレッドも参照のこと。

Bernadotte, Haut-Médoc
£23.95 Uncorkedその他

Grand Puy Lacoste, Pauillac
£100 Tanners

Pichon Baron, Pauillac
£133 C A Rookes (他では£200 以上するようだ)

Meyney, St-Estèphe
£42.60 Lay & Wheeler

Les Ormes de Pez, St-Estèphe
£25.85 plus tax Davy's Fine Wine Broking List

その他の取扱業者はwine-searcher.comを参照のこと。最近改めて(そのほとんどをブラインドで)テイスティングした168本のボルドー2009のスコアや飲み頃を記載したテイスティング記事はguide to 2009 bordeaux で見ることができる

(原文)

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