The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting | Wine writing competition

純粋な喜びを得られる2009 ボルドー、ただし相当の出費は必要

• 5 分で読めます
Image

この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。ファー(訳注:ファー・ヴィントナーズ)とBIワインズが企画したテイスティングに基づく全222本に及ぶ詳細なテイスティングノートとスコア、2009左岸赤右岸赤甘口白それぞれの飲み頃については各リンクを参照のこと。

私は毎年の初めにトップ・ワインの数ヴィンテージをテイスティングするのだが、その際に同席するボルドー専門のワイン商やコメンテータたちは非常に意地の悪い集団だ。ワイン商は特に、自分たちのテイスティング・コメントを公開する必要がないこともあり、そのコメントは徹底的に無礼で、そのスコアはこの上なく厳しい。

彼らは全員男性でイギリス人であるため、人を見下すことで優位に立つような風潮はある程度存在する。だが先日は私が彼らと同席してきた長い経験の中で初めて、彼らが2009の最高の赤ワインにおいて人と自然がなしえた偉大さに茫然とするのを目にした

2009のようにブドウが完熟したヴィンテージの場合には人の介入は通常よりも多くなる。それは気候のパターンが通常と異なるためだ。だが心地よく冷涼な冬と比較的雨の多い春のおかげでブドウは健全に育ち、地下水脈の水の量も十分蓄えられていた。そのあとは穏やかに安定し、決して極端ではない温暖で乾燥した夏が、2009というヴィンテージを「デッキチェアー・ヴィンテージ」と言わしめるようになった。すなわち、畑で湿度や病気と闘わずにすむからだ。

ブドウは順調に成熟し、果粒を膨らませる雨はほとんど降らなかったため果皮の果汁に対する比率は高く、色素、タンニン、味わいすべてが非常によく抽出されたワインとなった。保水性が高くない軽い土壌の地域では、雨が降らなかったことでブドウにあまりに大きなストレスがかかり、その成熟が止まってしまう場合もあったが、それを救うような軽い降雨があり、そして人間の重要な役割である収穫のタイミングを最適なタイミングで決められるよう、この上なく晴れて暖かい秋が訪れた。早熟なメルローの中には酸を保つために早く収穫を行ったものもあったが、左岸(メドックやグラーヴ)の生産者たちはカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としており、すでに凝縮したブドウがさらに凝縮感と成熟を増していくのを9月終盤から10月初頭にかけての熱波の中で見守るというこれまでにない贅沢を味わうことができた。雨が降らず、気温の急降下と言う危機もなかったため、彼らはいつ収穫するのか、最適な時期を自分で決めることができたのだ。

2009の収穫量もまた十分に多く、野心的な生産者の多くがその主力とするワイン、いわゆるグラン・ヴァンの品質を高めるためにあらゆることを試す余裕と意識をもつことができ、最高のロットのワインだけを使うことができた。このヴィンテージはまた、中国の投資家たちによる本格的な投資の新しい波がボルドーに到達した最初のヴィンテージでもあり、セオリー通り、その最高の価値とこの上なく高い価格を正当化するため、評論家たちから高得点をもらいに行くために躍起になった年でもあった。1級シャトーはさらにセカンド、あるいはサード・ワインの品質向上にもこれまでになく真剣に取り組みはじめた。

主にアジアからの強い需要のおかげで、また明らかに高い品質ということもあり、まだ出来立てのワインが翌春にはプリムールで記録的な価格で提供されることとなった。だがこれらの新しい投資家たちをがっかりさせたことは、これらから利益を得るには何年もの時間が必要となったことであり、市場では今でも最も価格の高いヴィンテージとなっている(下のLive-Exのグラフ参照のこと)。1級シャトーなどは一般的に、それらが2010年に売り出された当初よりも現在の方がはるかに価格は安いのである。

最高の赤のボルドーは2009ヴィンテージの中でも当然ぜいたく品の範疇に入るわけだが、現在テイスティングした中で最高のワインの状態から判断すると、残念ながらおそらくそれらはその価値があると認めざるを得ない(ワイン投資家ではなくワイン愛好家と言う立場から正直に言うと、私は全ての人に1級シャトーが購入できる価格になって欲しいと考えている。その意味で残念なのだ)。

とはいえ、2009はどれでも均一に偉大なわけではない。全体的な法則として、土壌が重いほどブドウは夏の干ばつ(2005ほどではないが)と暑さ(2003ほどではない)に耐え得る要素を持ち合わせていたと言える。だが一部のシャトーではブドウが明らかに繊細さを欠いていたし、中には収穫が遅すぎたためにレーズン化してしまったと思われるものもあった。通常これほどの数のボルドーをテイスティングする際に問題となるのはコルク臭だ。だが2009に関しては150本を優に超えるワインをテイスティングしたが、主な問題は酸化だった。それは特に右岸のポムロールとサンテミリオンに多く見られ、10年ほど経ってからようやく飲み頃になるべき上質なボルドーの一般的な常識と比較して遥かに早く熟成が進んでしまったことを示すと言えるのではないだろうか。

保水性の高い粘土質土壌が有名な右岸では、独自路線を行くペトリュスは別として、メルローにフレッシュさを与えるためにわずかにカベルネ・フランをブレンドしたものが功を奏しているように思われた。

グラーヴでは、1級格付けであるオーブリオンとその兄弟分であるラ・ミッション・オーブリオンはどちらも素晴らしかったが、前者はこれまでの中では珍しく、後者よりも保守的だった。

メドック南部のやや軽い土壌ではマルゴーの中でもあまり有名でないワインの方が北部よりもがっかりさせられることが多かったように思う。とはいえ、マルゴーの最高級のシャトーは大きな喜びを与えてくれるものだったし、1級であるシャトー・マルゴーなどは間違いなく壮麗であり、これは2009年からサード・ラベルを作りその収穫の4分の1を回してしまうほどになったことも一因と考えられる。

一方でこのヴィンテージの成熟度とアペラシオンの見せるフレッシュさとわずかな固さという、この上なく偉大な組み合わせを見せつけたのは土壌の湿度の高いサンテステフだ。今回のヴィンテージで最高にお買い得と思われるものはこの周辺であまり知名度の高くないもので、サンテステフやオー・メドックに区分されるものもあれば多くは我々が最近テイスティングしたものよりも格下のクリュ・ブルジョワとされるものだ。クリュ・クラッセの中ではモンローズとコスデストゥルネルの両方が、最初は成熟が進み過ぎてからの収穫なのではと思われたにもかかわらず、非常に良いことがわかった。だがモンローズの隣人で過小評価されがちなメイネイ、レゾルムドペス、フェラン・セギュールなどはすべて1本40から50ポンドであるにも関わらず、非常に印象的で、このヴィンテージにしてはめずらしく若々しさを保っている。

サンジュリアンのワインにもポヤックよりは若々しさを感じられたし、それには威厳あるバルトンや二つのレオヴィル、このヴィンテージでとくに野心的なデュクリュ・ボーカイユなども含まれる。姉妹シャトーであるサンピエールやグロリアも非常に出来が良く、親しみやすい。

ポヤックの最上のものとしては人々を魅了してやまないラトゥールとそのセカンド・ワインであるレ・フォール・ド・ラトゥールが突出していた(これは市場も認識していた通りだ)が、ラフィットとムートンもまたこの上なくスリリングで、価格も1本700ポンド程度と馬鹿々々しいレベルだ。それよりは値ごろ感があるもののそれでもまだ高いピション・バロンは200ポンドを切る程度だし、とくにグラン・ピュイ・ラコストは1本100ポンド程度であることからすると、ポヤックの2009としては比較的お買い得だと書かざるを得ないだろう。

魅惑的な2009の中でのお買い得

ボルドーの中でも過剰に高値のついたヴィンテージであり、多くのマイナーな銘柄は入手不可能である点を心に留めておいてほしい。だがもしシャトー・カプベルン、ガスクトン2009サンテステフをプリムールで私のおすすめ通り購入していたら、後悔はさせていないと思う。掲示板の2009ボルドーに関するこちらのスレッドも参照のこと。

Bernadotte, Haut-Médoc
£23.95 Uncorkedその他

Grand Puy Lacoste, Pauillac
£100 Tanners

Pichon Baron, Pauillac
£133 C A Rookes (他では£200 以上するようだ)

Meyney, St-Estèphe
£42.60 Lay & Wheeler

Les Ormes de Pez, St-Estèphe
£25.85 plus tax Davy's Fine Wine Broking List

その他の取扱業者はwine-searcher.comを参照のこと。最近改めて(そのほとんどをブラインドで)テイスティングした168本のボルドー2009のスコアや飲み頃を記載したテイスティング記事はguide to 2009 bordeaux で見ることができる

(原文)

購読プラン
スタンダード会員
$135
/年間
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 297,048件のワインレビュー および 16,151本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
プレミアム会員
$249
/年間
 
本格的な愛好家向け

「メンバー」プランの内容に加えて

  • 最新ワインレビューへの早期アクセス(48時間前)
  • 最新記事への早期アクセス(48時間前)
プロフェッショナル
$299
/年間
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 297,048件のワインレビュー および 16,151本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/年間
法人購読

「プロフェッショナル」プランの内容に加えて

  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
  • レビュー依頼用のワインを提出可能
  • 従業員向けにメンバーシップを提供し、一元的に管理可能
  • APIアクセス(※別途料金)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More 無料で読める記事

Markus and Eben Sadie at Berry Bros April 2026
無料で読める記事 この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 パラディウスのヴァーティカル・テイスティングも参照のこと...
Sam Neill
無料で読める記事 ジャンシスが、これまで出会った中で最も魅力的なワイン生産者を偲ぶ。写真上は、自身のトゥー・パドックスのブドウ畑にいるニール。...
A glass of Sauvignon Blanc at an airport bar
無料で読める記事 第一次審査を終え、今年のライティング・コンペティションの優秀作品の掲載を開始できることを嬉しく思う。選ばれた作品はすべて編集なしで掲載され...
Boscastle harbour
無料で読める記事 この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子) ザ・ロケット...

More from JancisRobinson.com

Barale estate and vineyards
テイスティング記事 困難なヴィンテージに関する最終報告。驚くほどフレッシュでアクセスしやすいワインに仕上がっている。本日は、複数の村のワインと、ケラスコ...
Valle de Guadalupe vineyards
現地詳報 メキシコのワイン産業は気候変動への対処法について教訓を与えてくれる、とメキシコを拠点とするジャーナリスト兼ソムリエのカルロス・ボルボア...
Richard Hemming and Hiromi Ohno outside Sushi Oono
Vinomakase リチャードの新連載「Vinomakase」では、専門家たちがワインと日本料理をどのようにマッチングさせているかを探る。第1回は...
Hops hang from the ceiling at Dylan's at The Kings Arms in St Albans
Bite-sized セント・オールバンズの大聖堂地区にある15世紀のパブで、最新の料理を堪能できる。 フロント・バーは今も安心できるほどパブらしさを保っている...
Person in Domaine Sérol's vineyards in the Côte Roannaise (credit Le Bon Cliché)
今週のワイン フランス中部の赤ワインに見る、渇きを癒すフレッシュさ。 £15.50、$26.95から 。...
CWL Wines of Brazil over map
書籍レビュー クラシック・ワイン・ライブラリーへの3つの新刊と、ポルトガル・ワインに関する自費出版ガイド。 以下のレビューのうち3冊は、アカデミー・デュ...
Sadie Family winery exterior
テイスティング記事 南アフリカで最も人気の高い白ワインの進化をたどる、示唆に富んだヴァーティカル・テイスティング。このワインは...
Léoville Barton - line-up of wines for vertical tasting
テイスティング記事 ボルドーの伝説的なシャトーによる25年分のワイン。 ボルドー・ヴァーティカル・テイスティング・ガイド[/ja/articles/guide...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.