ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | 🎁 年間メンバーシップとギフトプランが25%OFF

大酒飲みたちのディナー

Saturday 20 April 2019 • 5 分で読めます
Royal Humane Society dinner

この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。テイスティング・ノートについてはこちらを参照のこと。

フィナンシャル・タイムズの投稿欄に最も多く寄せられる苦情の一つが土曜日の人気コーナー、ランチ・ウィズ・FTシリーズで描き出される食事でアルコールを伴うことに対するものだ。著名な(当時デイリー・エクスプレスのオーナーだったリチャード・デズモンドが1本580ポンドもするワインをオーダーしたような)例外はあるものの、その内容はこの上なく禁欲的なものに思える。読者は憤慨と不信に駆られて行動しがちなものだ。

その補完と言えるかどうか、プロではない大酒飲みの人々が食事とともに何を飲んでいたのか記してある手元のノートをめくって、ここ数ヶ月の間に私が楽しんだ食事を紹介することをお許しいただきたい。

最初の話は9月にオーストリアで、3月に南オーストラリアでワインづくりをするオーストリア人カップル、バートルドとゲルトルドのサロモン夫妻(Bertold and Gertrud Salomon)とポートランドで楽しんだ4人での食事だ。彼らは自分たちのトップレンジであるオーストラリアのシラーズ、アルタス(Alttus)2012と2013をブラインドで、同ヴィンテージのオーストラリアで最も有名なシラーズ、ペンフォールズのグランジ、そしてフランスで同じ品種から作られ、最も高い名声を誇るエルミタージュと比較することでその実力を試し、自分たちのワインの特徴を見出したいと考えていた。(2015年の同様な試みは こちらも参照のこと)

このように、その名の確立したアイコン・ワインとブラインドで比較する手法はかの有名な1976年のパリスの審判以来、比較的無名の生産者の間で人気の手法だ。パリスの審判ではボルドーの1級シャトーやブルゴーニュの特級畑のワインとブラインドで比較して勝利したことによりカリフォルニア・ワインを世界に知らしめた出来事である。

ワインが何か知らない状態で比較することは楽しかったが、このケースではグランジを特定するのはどちらのヴィンテージでもあまりに容易だった。あれほど凝縮感が高く豊満で、やや薬っぽい、あの特徴的な香りは間違いようもない。

それより面白かったのはフルリオ半島の比較的冷涼な地域で作られるアルタスと2012のドゥラス・ベサール・エルミタージュ、最も尊敬を集めるエルミタージュの生産者、ジャン・ルイ・シャーヴの2013を比較し解読することだった。私はドゥラスがエルミタージュの花崗岩の丘の中でも最も高い評価を受ける区画から作られているにも関わらず、彼ら自身のスタイルをよく表現していることに気づいた。つまりどんどん飲みやすいスタイルになってきているのだ。(このワインは伝統的には最もタンニンが高く、固い赤ワインの一つとされているにも関わらず、2016のベサールでさえすでに今楽しめる状態だったのだ。)

ドゥラスのワインは3本の2012の中で最も軽やかだったが、アルタスの香りはまさにそれとわかるハーブのニュアンスがったため、わずかに口中で甘みを感じたので、それは間違いだとわかったものの、最初はフランスのものかと思ってしまった。

シャーヴ2013だと判明知ったワインがもっとも最もフランスらしいものだったが、驚くべきことと言おうか、私はアルタスの方が好みだった。豊潤でありながらフレッシュで、パワフルでありながらも行き過ぎていない。サロモン夫妻もこの試みに満足していただろう。

私のノートにある次のディナーはやはり著名なワインを次々とブラインドで提供するディナーだ。この場合参加者は10名で定期的にこのような試みを楽しむメンバーだ。幸運なことにお互いをあまりによく知っているので、厳しい掟を課しており、場合によっては見当はずれな推測をしたものを笑いものにすることもある。

サイモン・ホプキンソン(Simon Hopkinson) のクリーミー・チキンとマッシュルームのパイにバター・キャベツを添えた一皿と共に、きら星のようなマグナムが連続して提供された。シャトーヌフ・デュ・パプのカルト、シャトー・ラヤスの完璧なまでに偉大な2つのヴィンテージのものだ。1989は1990と共に特に恵まれた年だが、1998は西ロンドンのテーブル上では少なくともその上を行っているように思われた。フィナンシャル・タイムズの私の前任者、エドモンド・ペニング・ロウゼルはいつも、コルクを抜くと決めたのなら、そのワインがいくらだったのかは忘れるべきだと話していた。そのアドバイスに従ってこの素晴らしいマグナムを提供してくれた友人に感謝だ。

一方、我々の多くが白のブルゴーニュだと思った非常にお買い得な1本はニュージーランド、クメウ・リヴァーのハンティング・ヒル・シャルドネで、昨年1本38ポンドで販売されていたものだ。これがホプキンソンのビートの根のコンソメ、ホースラディッシュ・クリーム添えと素晴らしい相性だった。我々の肝臓の強さに興味を持ったあなたのために書くと、我々は10名で5本のマグナムと1971のシャトー・ド・ファルグ1971(ソーテルヌ)1本を空けた。このように豪華なディナーの前に私はアルコールの代謝を助けると言われる(そう信じたい)サプリメント、オオアザミを飲むようにしている。これを忘れると、翌朝はひどい状態になるのだ。

これらの素晴らしいラヤスのマグナムを販売するロンドンのセラーでは、1月に全てアメリカのワインのディナーも開催している。そこでは比較的希少でカルト・ワインの先駆けのひとつ、ヘレン・ターリーのマーカッシン、ソノマ・コーストにあるスリー・シスターズ・ヴィンヤードのシャルドネも含まれていた。その2009はカリフォルニアの中でも冷涼なこの地域で出会うどんなワインよりもはるかに芳醇なものだったが、そのピークは恐らく過ぎているように思えた。

次に、ポーク・テンダーロインとフェンネル・サラダ、マッシュ・ポテト添えと共にナパ・ヴァレーのシラーが2本提供された。一つは贅沢にもコルギン(現在はLVMHの傘下)の2002シラーでまだ非常によい状態だった。もう一つははるかに涼しいカーネロスのコングスガード2000で、これは声高なコルギンにやや圧倒されてしまったようだった。シラーの故郷である北部ローヌのようにもう少し控え目なものと一緒に提供された方がより魅力を感じられたように思う。

この偉大なセラーを持つホストは甘口ワインに目がなく、特にシャトー・ディケムが大好きだが、なにかテーマのあるものも好きだ。そこで彼は焼き直したクリスマス・プディングと共に珍しい、非常に甘いカリフォルニア・ワインを提供した。Mr Kゲヴュルツトラミネール1999はオーストリアの甘口ワインの王、故アロイス・クラッハーと、南カリフォルニアの高価な狂気とされるシン・クア・ノン・ブランドを所有するマンフレッド・クランクルの努力の結晶がしっかりと熟成していた。

先月ロンドンへ帰る直前に香港で楽しんだ家族ディナーのホストもまた、テーマを持たせるのが好きで、たいていそれは数字にまつわるものだ。彼は中国人である。我々が楽しんだ3本のワインは全てブルゴーニュのグラン・クリュ(香港でそれ以外に何があるだろうか?)で、ヴィンテージが全て3で終わるものだった。彼は熱波のヴィンテージである2003は暑すぎる危険があるとして除き、ドメーヌ・ポンソの2013コルトン・シャルルマーニュから始めた。マーカッシンをさらにバタースコッチ寄りにした感じだ。その価格の数十分の一のクメウ・リヴァーのシャルドネのフレッシュさが欲しくなった。

やや埃っぽい1993クロ・ヴージョはドメーヌ・エジュラン・ジャイエのもので、その遠縁のいとこで世界的に有名で多くの人が今でも求めるヴォーヌ・ロマネのアンリ・ジャイエ所有の、今は稼働していないドメーヌだ。(彼の蔵に眠っていたワインの多くは4年前に香港のオークションにかけられ、富豪のコレクターたちがそれを超高額で競り落とした)

1984グリオット・シャンベルタンはエドゥアール・ドロネイ(Edouard Delaunay )の名を冠しており、ネゴシアンであるボワセが1992年から2017年まで所有していたものを買い戻し、エドゥアールの孫でラングドックでもワインを作るローラン・ドロネイが最近再稼働させたものだ。この1983は非常に美味しく、このヴィンテージにしばしばみられる病害に由来するかび臭さを微塵も感じさせなかった。

私のテイスティング記録から抜き出したいくつかだけでもお分かりだろう。なかなかの泥酔状態だが、何か問題があるだろうか。

比較的価格の低い代替品
上述の1本あたりのおおよその価格と共に

Salomon Fleurieu Shiraz (£110)

Salomon Baan Shiraz 2016 Fleurieu
£12.95 Lea & Sandeman

Kumeu River Chardonnay (Hunting Hill £38)

The Society's Exhibition New Zealand Chardonnay 2017 Kumeu
£14.95 The Wine Society

Rayas-inspired Garnachas (Rayas 1998 £500)

Frontonio, Supersónico Garnacha 2016 IGP Valdejalón
£14.71 winebuyers.com

Dani Landi, Uvas de la Ira 2015 Sierra de Gredos
£23 Wine & Greene of Devon, £180 a dozen in bond BI Wines

Napa Valley Syrah (Colgin £350)

Lagier Meredith Syrah 2011 Mount Veeder
£23.33 plus taxes Falcon Vintners

テイスティング・ノートについてはBibulous dinners recordedまたはデータ・ベースを参照のこと。その他の取扱業者についてはWine-Searcher.comを。

原文

この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
JancisRobinson.com 25th anniversaty logo

JancisRobinson.com 25周年記念!特別キャンペーン

日頃の感謝を込めて、期間限定で年間会員・ギフト会員が 25%オフ

コード HOLIDAY25 を使って、ワインの専門家や愛好家のコミュニティに参加しましょう。 有効期限:1月1日まで

スタンダード会員
$135
/year
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 286,046件のワインレビュー および 15,812本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
プレミアム会員
$249
/year
 
本格的な愛好家向け
  • 286,046件のワインレビュー および 15,812本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
プロフェッショナル
$299
/year
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 286,046件のワインレビュー および 15,812本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/year
法人購読
  • 286,046件のワインレビュー および 15,812本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More Free for all

RBJR01_Richard Brendon_Jancis Robinson Collection_glassware with cheese
無料で読める記事 What do you get the wine lover who already has everything? Membership of JancisRobinson.com of course! (And especially now, when...
Red wines at The Morris by Cat Fennell
無料で読める記事 A wide range of delicious reds for drinking and sharing over the holidays. A very much shorter version of this...
JancisRobinson.com team 15 Nov 2025 in London
無料で読める記事 Instead of my usual monthly diary, here’s a look back over the last quarter- (and half-) century. Jancis’s diary will...
Skye Gyngell
無料で読める記事 Nick pays tribute to two notable forces in British food, curtailed far too early. Skye Gyngell is pictured above. To...

More from JancisRobinson.com

Saldanha exterior
現地詳報 南アフリカの人里離れた西海岸で、思いがけない酒精強化ワインの復活が起こっている。マル・ランバート (Malu Lambert)...
Still-life photograph of bottles of wine and various herbs and spices
現地詳報 リチャードの著書から抜粋した、アジアの風味とワインをペアリングする方法に関する全8回シリーズの第3回目...
Old-vine Clairette at Château de St-Cosme
テイスティング記事 ジゴンダス・ブランは2024年に新アペラシオンの名に恥じない出来栄えを見せている。写真上は、この年のヴィンテージの傑出した生産者の一つ...
Hervesters in the vineyard at Domaine Richaud in Cairanne
テイスティング記事 南部のクリュの中で2024ヴィンテージの注目株はケランヌとラストーだが、他のアペラシオンにも気に入るワインが数多くある。写真上は...
Gigondas vineyards from Santa Duc winery
テイスティング記事 2024年はジゴンダスが優位に立っているが、どちらの産地も多くの飲み応えを提供している。写真上は、サンタ・デュック(Santa Duc...
The Look of Wine by Florence de La Riviere cover
書籍レビュー A compelling call to really look at your wine before you drink it, and appreciate the power of colour. The...
Clos du Caillou team
テイスティング記事 2024ヴィンテージには飲む楽しみがたっぷり詰まっており、長い熟成を待つ必要もなさそうだ。写真上のクロ・デュ・カイユー(Clos du...
Ch de Beaucastel vineyards in winter
現地詳報 Yields are down but pleasure is up in 2024, with ‘drinkability’ the key word. Above, a wintry view Château de...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.